【気候科学】人間の活動と干ばつの傾向を関連付ける
Nature
2019年5月2日
Climate science: Linking human activity and drought trends
20世紀中に人間の活動が地球上の干ばつ状態に及ぼした影響を示す証拠について報告する論文が、今週掲載される。干ばつの深刻度に関する記録から、3つの異なる傾向が明らかになり、人間活動によって生じる温室効果ガス、そしておそらくはエアロゾルが干ばつのリスクに影響を及ぼしている可能性があることが示唆されている。
人間活動が引き起こす気候変動は、持続的な干ばつや降水量増加のリスクを左右する全球的な水文気候に変化をもたらすと考えられている。全球的な干ばつリスクに対する人間活動の影響を明らかにする試みは、水文気候の変化に地域差があり、詳細な観測データが存在しないために困難さを増している。
今回、Kate Marvelたちの研究グループは、これらの課題に取り組むため、樹木の年輪データを用いて作成され、さまざまな地域における土壌水分の変化を図示した「干ばつアトラス」をその他の気候モデルと気候観測結果と組み合わせて解析し、土壌水分の変化を引き起こす要因と考えられるものを同定した。Marvelたちの記録は、干ばつが1900~1949年に増加し、1950~1975年に減少し、それ以降は、増加傾向が加速していることを示している。
20世紀前半の干ばつ傾向は、温室効果ガス排出量の増加に対応している。そして、この傾向が1950~1975年に逆転したことは、エアロゾル生成量の増加と符合している。エアロゾルは、降水量に影響を及ぼし、雲量を変化させることが明らかになっている。ただし、Marvelたちは、エアロゾルの濃度と干ばつのリスクの関連については、さらなる研究が必要だと指摘している。20世紀末にかけて干ばつが増加したことは、温室効果ガス排出量と関連していると考えられるが、根本原因は解明できておらず、この関連性は統計的にロバストなものではない。
今回の研究で得られた知見は、人間活動と干ばつリスクの関連が、早ければ20世紀初頭から生じていたとする見解と矛盾しない。
doi: 10.1038/s41586-019-1149-8
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