注目の論文

現在の欧州のジャガイモの複雑な進化史

Nature Ecology & Evolution

2019年6月25日

The mashed-up evolutionary history of the modern European potato

最初に欧州に導入されたジャガイモはアンデス地方の品種に近縁で、それが後にチリの品種と交配されたことを報告する論文が、今週掲載される。

ジャガイモは南米のアンデス地方が起源で、現在では世界各地に見られる。欧州大陸のジャガイモに関する歴史記録は、16世紀後半のスペインまでさかのぼる。ジャガイモの塊茎の成長は、日長や温度などの複数の環境要因の影響を受ける。こうした環境要因はアンデス地方と欧州とで異なっているため、欧州でジャガイモが普及するには、新しい環境条件への適応が必要であった。

今回Hernan Burbanoたちは、チリと欧州の過去のジャガイモ(1660~1896年のもの)のゲノムの塩基配列を明らかにした。調べた標本の中には、ダーウィンがビーグル号での航海で収集したものも含まれる。Burbanoたちはまた、南米と欧州の現在の地方品種のゲノムの塩基配列解読も行った。その結果、1650~1750年に収集された欧州最古のジャガイモは、アンデス地方に由来することが分かった。その後の100年で、欧州のジャガイモは新たに導入されたチリのジャガイモと交配された。そして20世紀には、欧州で栽培されるジャガイモと野生種との遺伝子交換が行われた。

現在の欧州のジャガイモは、長日への適応と関連するCDF1遺伝子のバリアントを有している。CDF1の長日バリアントは、19世紀の欧州の試料には認められたが、1650~1750年の試料には認められなかった。これは、CDF1の長日対立遺伝子が欧州で最初に出現したことを示唆するが、コロンブスによるアメリカ大陸発見以前のチリにそれがわずかながら存在していた可能性もある。

Burbanoたちは、南米のさまざまなジャガイモ品種が欧州で交配されたことが、野生種との交配と相まって、現在の欧州ジャガイモの多様性に寄与していると結論付けている。

doi: 10.1038/s41559-019-0921-3

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