環境:中国の石炭火力発電所の段階的廃止のための個別的戦略
Nature Communications
2021年3月17日
Environment: A plant-by-plant strategy for coal power phaseout in China
中国が性能の劣る石炭火力発電所を迅速に廃止し、その他の石炭火力発電所の利用率を20~30年以内に徐々に減少させることで、中国の正味CO2排出量が、全球平均気温の上昇を産業革命前比で摂氏1.5度以下に抑えるシナリオの下では2055年までに、摂氏2度以下に抑えるシナリオの下では2070年までにゼロとなる可能性があると示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、中国が目指す2060年までのカーボンニュートラルを達成するための実行可能な道筋を示すのに役立つかもしれない。
中国は現在、世界の石炭火力発電容量の半分以上を保有している。中国は昨年、2060年以前にカーボンニュートラルを達成するという目標を発表したが、今後数十年間で石炭火力発電所の段階的廃止を達成する一方で、資産の座礁化を避けたり地方開発のための電力需要を満たしたりするなど、複数の優先事項のバランスを取るという大きな課題に直面している。
今回、Ryna Yiyun Cuiたちは、現在中国で稼働している1037基の石炭火力発電所について、その技術的影響、経済的影響、環境的影響を示す8つの異なる基準を用いて体系的な評価を行った。その結果、上海市、山東省、黒竜江省、河北省、甘粛省、遼寧省、山西省、吉林省、青海省、河南省の石炭火力発電所は、基準の3つのカテゴリー(技術的基準、経済的基準、環境的基準)全てで平均スコアが最も低かった。Cuiたちは、性能スコアが一貫して低い発電所の18%を特に早期廃止が適切な発電所と判定し、残りの発電所については、地域の事情に応じて異なる優先順位を反映させるために柔軟に適用できるよう、2つの代替的な段階的廃止戦略を設計した。例えば、既存の発電所は、廃止するまで現在の発電量のまま稼働し続けるか、最短の設計耐用年数(20~30年)まで稼働させ、稼働時間を短縮するというものである。
Cuiたちは、これらの戦略が、進行中または計画段階にある新しい石炭火力発電所の建設を考慮せず、既存の発電所の段階的廃止だけを考えて議論されている点を強調している。従来型の石炭火力発電所の新規建設を直ちに中止することは、座礁資産のリスクの低減につながり、カーボンニュートラルの目標を達成する上で極めて重要と考えられる。中国における石炭火力発電所の段階的廃止による経済的影響と社会的影響の可能性を調べるには、さらなる研究が必要である。
doi: 10.1038/s41467-021-21786-0
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