注目の論文

気候変動:21世紀に入って加速した世界の氷河の質量減少

Nature

2021年4月29日

Climate change: Accelerated global glacier mass loss in the twenty-first century

過去20年間に世界の氷河の質量減少が加速したことを報告する論文が、Nature に掲載される。この推定結果は、20万か所以上の氷河(地球上のほぼ全ての氷河)の高分解能マッピングに基づいており、最新の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書や最近の全球的研究と比較して、不確かさが著しく減った。氷河の融解の時間経過を明らかにし、氷河の融解によって地域的な水文がどのように変化して、海水準上昇の一因になるのかを解明することは、将来の変化を予測するモデルを改善する上で役立ち、水資源の管理と海水準上昇の緩和のための戦略にとって有益な情報をもたらす可能性がある。

今回、Romain Hugonnetたちの研究チームは、多様な衛星画像と航空画像(主に50万件の衛星ステレオ画像)のアーカイブを分析して、個々の氷河の質量変化を調べた。次にHugonnetたちは、研究対象となった全世界の21万7175か所の氷河(氷床を除く)について、21世紀初頭の20年間の標高(海水準からの高さ)の変化を推定した上で、この推定値を、入手可能な独立した高精度測定値を用いて検証し、個々の氷河の体積と質量の変化を算出した。その結果、2000~2019年の全世界の氷河の質量減少量は、平均で年間267ギガトンであり、観測された海水準上昇の21%に相当すると推定された。世界の氷河の質量減少は、2000年以降の各10年間に毎年48ギガトンのペースで加速しており、このことで、観測された海水準上昇の加速の6~19%を説明できる。Hugonnetたちは、これまでの研究と比べて、氷河の質量減少を巡る不確かさが著しく減ったことで、氷河の質量減少に関する地域的パターンの定量化、背後にある気候要因、質量減少の推定加速度に対する信頼性が高まったと結論付けている。

doi: 10.1038/s41586-021-03436-z

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