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古生物学:先史時代の哺乳類は海岸近くを好んだことを示唆する足跡化石

Scientific Reports

2021年5月14日

Paleontology: Prehistoric footprints suggest mammals did like to be beside the seaside

米国ワイオミング州のハンナ累層で最近発見された、5800万年前のものとされる行跡化石は、哺乳類が海岸近くに集まっていたことを示す最古の証拠と考えられることを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。この知見は、哺乳類が海洋生息地を最初に使用したのが、これまで考えられていたより少なくとも940万年早く、始新世(5600万~3390万年前)ではなく暁新世後期(6600万~5600万年前)であったことを示唆している。

今回、Anton WroblewskiとBonnie Gulas-Wroblewskiは、植物と花粉の化石を用いた年代測定によって5800万年前と決定された区域で1000メートル以上にわたる足跡化石を調査し、撮影した。Wroblewskiたちは、複数種の行跡を特定した。1つの行跡は、現代のヒグマの足のサイズに匹敵する比較的大きな5本指の足跡であり、もう1つの行跡は、中型の4本指の足跡だった。Wroblewskiたちは、5本指の足跡が、カバに似た半陸半水生の汎歯目哺乳類の一種であるコリフォドンの足跡だと考えている。4本指の足跡は、古新世後期の既知の哺乳類の骨格証拠と一致しなかったが、偶蹄目哺乳類とバク上科哺乳類(有蹄哺乳類)と類似点があった。ただし、これらの哺乳類が古新世に存在していたことは、まだ立証されていない。

これらの行跡化石は、先史時代の海生軟体動物や海生環形動物だけでなく、イソギンチャクも生息していた痕跡のある区域まで続き、その区域を横切っていた。これは、その区域が、かつては浅い潟湖か湾であったことを示している。Wroblewskiたちは、先史時代の哺乳類が海岸近くに集まった理由は、この区域を横切る渡り、捕食者や刺咬昆虫からの防護、先史時代の北米熱帯林では限られていたナトリウム鉱物の入手など、現生哺乳類と同様であると推測している。

doi: 10.1038/s41598-021-88412-3

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