環境:洪水多発地域の人口が増加している
Nature
2021年8月5日
Environment: Increasing populations in flood-prone areas
洪水多発地域の人口増加率が他の地域よりも高くなっていることを報告する論文が、Nature に掲載される。人工衛星の観測データから、世界人口に占める洪水被災者の割合が今世紀に入ってから約25%増加していることが分かった。これは、これまでの予測の10倍に当たる。この増加は、2030年まで続くと予想されている。
洪水は、他のどのような環境ハザードよりも被災者が多い。洪水の頻度と強度が高まると、世界中の洪水被災を正確に測定して、洪水適応政策を改善し、人々の生命と生活が失われる事態を減らす必要性も高まる。これまでの数々の研究で、洪水被災の推定が行われてきたが、不確実性の高い全球モデルだけに依存したものが多かった。
今回、Beth Tellmanたちは、洪水に関する精度の高い日々の衛星観測結果を用いて、2000~2018年に発生した大規模な洪水事象913件について、氾濫面積と被災者数を推定した。250メートルの解像度で撮影された合計1万2719枚の画像を調べたところ、この期間中に223万平方キロメートルの洪水が発生し、2億5500万~2億9000万人が直接影響を受けたことが明らかになった。その一方で、2000~2015年の期間中の洪水多発地域の人口増加率は、他の地域よりも高かった。世界の総人口は18.6%増加したが、氾濫区域の居住者は34.1%増加した。同じ期間中に、氾濫区域の居住者数が5800万~8600万人(20~24%)増加し、これは、1970~2010年に推定された数々の洪水モデルの10倍である。気候変動予測によると、この割合は、2030年までにさらに大きくなり、特に57か国(北米、中央アジア、中央アフリカの一部を含む)で、人口に占める洪水被災者の割合が大幅に増加すると示唆されている。
Tellmanたちは、洪水リスクが上昇していることを示す証拠が今回の研究によって示されたことを踏まえて、こうした証拠が、重要な洪水適応策(例えば、他の地域への移住を奨励する政策)の決定に役立つことを期待している。
doi: 10.1038/s41586-021-03695-w
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