材料科学:持続可能な亜鉛イオン電池のための新たな電解質の設計
Nature Sustainability
2021年12月3日
Materials science: New design for sustainable zinc batteries
水系亜鉛イオン電池の性能と製造コストを改善できる新たな電解質の設計について報告する論文が、Nature Sustainability に掲載される。こうした知見は、安全性、性能、持続可能性を併せ持つ実用的な亜鉛イオン電池を開発できる可能性を示唆しており、携帯用電子機器や電気自動車に使われている従来のリチウムイオン電池の代替となる可能性を浮き彫りにしている。
亜鉛は、リチウムより安全で、費用対効果と環境適合性が高いため、携帯用電子機器や電気自動車向けに、リチウムイオン電池のより持続可能な代替として水系亜鉛イオン電池を使用することへの関心が高まっている。しかし、亜鉛イオン電池における水性の電解質(イオンを伝導する電池内の液体)の使用には、困難な課題がある。こうした課題には、亜鉛の不規則な析出、水素ガスの生成、電極の腐食が含まれ、それら全てが急速な性能低下につながり得る。
今回、Quan-Hong Yangたちは、水和した亜鉛塩からなる新種の電解質の設計について報告している。この電解質では、内在する少量の水が、水系亜鉛イオン電池に伴う安全性の問題や技術的課題に対処するだけでなく、不燃性になるのにも重要な役割を果たしている。また、Yangたちは、亜鉛イオン電池に通常使われている電解質と比べて、今回の電解質にコスト競争力があることを詳しく述べている。さらに、今回実証された電池は、室温だけでなく−30~40℃の温度範囲で優れた性能を示す。
関連するNews and Viewsでは、Florencio SantosとAntonio Fernández Romeroが、性能をさらに最適化するべきだが、今回の研究は「安価で環境に優しい電解質を使って、亜鉛イオン電池のいくつかの重要な課題に取り組んだ」と強調し、「今回の成果に基づいて開発を進めれば、信頼性のある手頃な価格の電池を作り、実装して、持続可能な未来への移行を助けることができる」と結論付けている。
doi: 10.1038/s41893-021-00800-9
注目の論文
-
11月13日
地球科学:2022年のマウナロア火山の噴火を調査するNature Communications
-
11月12日
気候変動:南極の氷が人為的な温暖化が1.5℃の温暖化の限界に近づいていることを示唆しているNature Geoscience
-
11月12日
惑星科学:ボイジャー2号が天王星をフライバイしたのは太陽の異常現象の最中だったNature Astronomy
-
11月8日
気候変動:プライベート航空による二酸化炭素排出量の大幅な増加Communications Earth & Environment
-
11月7日
地球科学:インドプレートとユーラシアプレートの収束の加速を説明するNature
-
10月25日
保護:深刻な絶滅の危機に瀕するスマトラトラに対してより大きな保護が必要Scientific Reports