気候変動:21世紀の地球温暖化の社会的決定要因
Nature
2022年2月17日
Climate change: Social determinants of global warming over the 21st century
このほど実施されたモデル化研究で、気候変動の認識、気候変動緩和戦略のコストと有効性、政治的対応の全てがどのように相互作用して、21世紀の地球温暖化の道筋を決定するのかが明らかになった。この知見について報告する論文が、Nature に掲載される。今回の研究では、想定される10万通りの将来的な政策と温室効果ガス排出量の軌跡の分析が行われ、その結果得られた知見から、気候変動モデル化において気候と我々の社会との基本的な相互作用を考慮することの重要性が明確に示された。
気候と我々の社会との間には複雑な相互作用が存在しており、社会制度、政治制度、経済制度、技術システムの相互作用は、温室効果ガス排出量の軌跡に影響を及ぼすことがある。しかし、社会制度、政治制度、経済制度、技術システムが、将来の温室効果ガス排出量と気温のシナリオに及ぼす複合的影響は、政策が策定される可能性のある状況が形成されているにもかかわらず、まだ十分に研究が進んでいない。
今回、Frances Mooreたちは、広範な社会的、政治的、技術的分野のデータを結び付けた統合型集学的モデルを用いて、将来起こり得る10万通りの排出量と政策の軌跡をシミュレーションした。これらの軌跡は、5つのグループに分けることができ、2100年の時点での地球温暖化は、1880~1910年の期間の平均気温より1.8~3.6℃高い範囲内で変動した。Mooreたちは、21世紀中の排出量と政策の軌跡の変動とその後の温暖化に影響を及ぼし得る重要な要因をいくつか明らかにした。これらの要因には、一般市民が気候変動をどのように認識しているか、気候変動緩和技術のコストと有効性、政治制度の応答性などが含まれている。
Mooreたちは、異なる社会的要因、政治的要因、技術的要因の間の複雑な結び付きが、気候変動政策の新規策定と将来の方向性と、温室効果ガス排出量の結果が決まる際に影響を及ぼし得ると結論付けている。この影響の程度を突き止めるには、これらの排出量と政策の軌跡を、統合型気候–社会モデルへの入力情報としてではなく、このモデルの結果として扱う独自のアプローチが必要だ。
doi: 10.1038/s41586-022-04423-8
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