注目の論文

生態学:気候変動に対する森林の応答

Nature

2022年8月11日

Ecology: Forest responses to climate change

地球規模の変化(例えば気温の上昇)に対する森林や樹種の応答を調べた4編の論文が、今週、Nature で発表される。これらの研究は、北米とアマゾン川流域の森林が気候変動に応答して直面する可能性のあるいくつかの課題を浮き彫りにしている。

今回、北米の9種の北方樹種(カエデ、モミ、トウヒ、マツなど)の研究で、温暖化や降水量の減少に応答して、全ての樹種で幼樹の生存が低下することが示された。Peter Reichたちの研究チームは、5年間の野外実験を行って、北方林南部に多く生育しているモミ種、トウヒ種、マツ種の成長と生存が、気候の変化のために最も大きく低下したことを明らかにした。これに対して、枯死率が低く、温暖化に応答して成長する可能性が高い樹種(例えば、カエデ)は、北方林南部に少なく、現在の優占種の再生不良を補うほど急速に分布を拡大する可能性は低いことが分かった。

一方、Roman Dialたちの論文では、北米に生育するカナダトウヒ(Picea glauca)の個体群が、数千年にわたって占有していなかった北極のツンドラ地帯で、10年間に4 km以上も北進したことが記述されている。Dialたちは、気温の上昇と冬の風、積雪量の増加と利用可能な土壌養分の増加が相まって、この樹木限界線の北進を支えていることを明らかにした。そして、Dialたちは、北極圏の樹木被覆率の上昇が、渡り性の種が利用できる生息地の減少と炭素貯蔵の再分配につながるかもしれないと主張している。

また、Kristina Anderson-Teixeiraたちは、バンド式デンドロメーター(測樹器)による測定結果と北米東部の温帯落葉樹林の108カ所の森林で収集した207件の年輪年代データを組み合わせて研究を行った。その結果、春季気温の上昇は、幹の成長期を早めるが、幹の年間成長量にほとんど影響しないことが明らかになった。これらの森林が温暖化条件に急速に順応しない限り、気温の上昇に伴って炭素の隔離量が増加する可能性は低いという見解をAnderson-Teixeiraたちは示している。

そして、Hellen Fernanda Viana Cunhaたちは、アマゾン川流域の森林で、利用可能なリンの量に限りがあると、CO2の肥沃化効果への応答が抑制されて、森林の生産力に直接影響が及ぶことを明らかにした。この知見は、気候変動に対する森林の回復力にとって大きな意味を持つ可能性がある。

doi: 10.1038/s41586-022-05076-3

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