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気候変動:温室効果ガス排出によって海洋生物が受けるリスクの評価

Nature Climate Change

2022年8月23日

Climate change: Risk to marine life from contrasting emissions assessed

Nature Climate Change

約2万5000種の海洋生物が直面する気候リスクの評価が行われ、高排出シナリオの下では、約90%が2100年までに高リスクまたは重大なリスクに直面することが明らかになった。この知見は、このほど実施されたモデル研究によって得られたもので、保全活動の優先順位の決定に役立つかもしれない。この知見を報告する論文が、Nature Climate Change に掲載される。

気候変動は、生態系の変化と生物多様性の減少を引き起こしており、対応策の優先順位を決めるために各種リスクを理解する戦略が必要となっている。管理によって得られる価値を最大化するためには、気候リスク評価が、経験と観察に基づき、空間的に明確で、気候条件の変化だけでなく、生物種の感受性と適応性を考慮したものであることが望ましい。

今回、Daniel Boyceたちの研究チームは、世界中の海洋生物(海洋の表面から深さ100 mまでの海域に生息する動物、植物、クロミスタ、原生動物、細菌など)2万4975種の気候リスク予測を評価した。温室効果ガスの高排出シナリオ[IPCCの共通社会経済経路(SSP)5–8.5]の下では、生物種の約90%が、2100年までに現在の生息地で生き残れなくなるリスクが高リスク又は重大なリスクになり、それが、地理的分布の平均85%にわたることが予測されている。また、Boyceたちは、海洋の10分の1には、高い気候リスク、固有性(生物種がわずかな地域でしか発見されない)、生物種に対する絶滅の脅威が複合的に存在する海域があることを明らかにしている。絶滅の脅威が最も大きいのは、大型の捕食者種で、特に食用に捕獲される種(フグ、マグロ、サメなどの種)と漁業への依存度が高い低所得国に生息する種だ。Boyceたちは、2100年までに(SSP 1–2.6シナリオの下で)温室効果ガス排出量を削減すれば、研究対象となった生物種のほとんど全てでリスクを低減でき、生態系の安定性を高め、低所得国の食料不安に苦しむ人々に逆に過大な利益をもたらすと予測している。

Boyceたちは、地理的な違いと生息地の位置の重要性を考慮に入れて、気候指向の管理戦略の一環としての脆弱な海洋生物種と海洋生態系の保全に優先順位をつける際には、今回の知見を利用できるかもしれないと結論付けている。

doi: 10.1038/s41558-022-01437-y

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