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環境科学:二酸化炭素の社会的コストが実はもっと高かった

Nature

2022年9月2日

Environmental sciences: Increasing social costs of carbon dioxide

Nature

CO2排出量の増加によって社会が受ける被害の額が、これまでの評価の4倍近くになる可能性があることを示唆する論文が、Nature に掲載される。炭素の社会的コストは、現在の米国政府の算定結果によると、二酸化炭素排出量が1トン増えるごとに51ドル(約6600円)になるとされるが、今回の論文に示された新しい算定結果では、185ドル(約2万4100円)となった。このように社会的コストが高くなったことは、温室効果ガス緩和戦略に期待される便益が増加させ、全世界のさまざまな気候政策にとって有益な情報になるかもしれない。

CO2の社会的コストという尺度は、CO2排出の負の結果の貨幣価値を算出することを目的としており、温室効果ガス排出削減策の純便益(温室効果ガス排出削減の経済的費用とこの削減戦略によって回避される被害額との差額)をはじき出す際に有用だ。しかし、米国の連邦政府が採用しているCO2の社会的コストの算定方法は時代遅れとされ、気候科学、経済学、人口統計科学の最近の進歩が反映されていないことを示唆する複数の研究報告があった。

今回の論文で、David Anthoffたちは、排出量削減戦略の費用と便益を定量化するために新たに作成したモデルを示している。このモデルによって、CO2の社会的コストの算定値が大幅に増加した。このモデルは、CO2の社会的コストを算定するプロセスの各段階で、新しい要素、例えば、改善された社会経済的予測、気候モデル、気候影響評価、経済的割引(予測される将来コストを現在価値で表示すること)を用いている。Anthoffたちは、この方法を使って、現在も続いているCO2の社会的コストの算定ができ、他の温室効果ガス排出の社会的コストの算定もできるかもしれないと述べている。また、Anthoffたちは、このモデルでは、気候変動による被害の他の尺度(例えば、気候に起因する移住、紛争、文化遺産の喪失など)が考慮されていない点を指摘している。しかし、現行の二酸化炭素1トン当たり51ドルという算定値から185ドルに増額したことで、もっと厳しい気候変動政策に期待される純便益が増加するとAnthoffたちは結論付けている。

doi: 10.1038/s41586-022-05224-9

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