注目の論文

気候科学:2020年の大気中メタン濃度の増加率の理由を説明する

Nature

2022年12月15日

Climate science: Explaining the atmospheric methane growth rate in 2020

Nature

2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウンがあったにもかかわらず、大気中メタン濃度の増加率が上昇した。この結果について、湿地からのメタン排出量の増加と大気中のメタン吸収源の減少によって説明できると示唆した論文が、Natureに掲載される。この知見は、メタン排出量の削減に多面的なアプローチが必要なことを示している。

メタンは、温室効果ガスの中でも重要な意味を持っており、人間活動によって排出される温室効果ガスによる温暖化の約20%に寄与している。大気中のメタン濃度は、過去10年間に急速に増加しており、化石燃料の使用量増加とメタン発生源である微生物の増加によるものと考えられている。COVID-19によるロックダウンが人間活動によるメタン排出量を減少させた可能性があるという仮説にもかかわらず、大気中メタン濃度の増加率は2020年にピークに達し、増加率の伸びは1984年以降で最も高い水準に達した。

今回、Shushi Pengたちは、メタン源と大気中の天然のメタン吸収源の変化を測定することによって、大気中メタン濃度が増加した理由を調べた。大気は、天然のメタン吸収源であり、メタンは、ヒドロキシルラジカル(OH)と反応してCO2と水に変換される。Pengたちは、OHの濃度が2019年と比較して約1.6%減少し、COVID-19によるロックダウン中に人為起源の窒素酸化物排出量が減少したことが主たる原因だったと報告している。また、人間活動と火災によるメタン排出量が、1年間にそれぞれ1.2テラグラム(兆グラム)と6.5テラグラム減少したが、湿地からのメタン排出量は年間6.0テラグラム増加したことも明らかになった。その主要な発生源は、具体的には、北半球において気温が上昇し、降水量が増加した湿地帯だったと報告された。

以上の結果は、メタン排出量が、気温上昇と降水量の増加に敏感であり、将来的に正のフィードバック機構として作用するかもしれないことを示している。また、全球的な人為起源のメタン排出量を削減する方法を検討する際には、窒素酸化物の排出量も考慮に入れる必要があるとPengたちは付言している。

doi: 10.1038/s41586-022-05447-w

英語の原文

注目の論文

「注目の論文」一覧へ戻る

advertisement
プライバシーマーク制度