注目の論文

持続可能性:ハワイのサンゴ礁に対する観光事業の影響の評価

Nature Sustainability

2023年1月10日

Sustainability: Assessing the impact of tourism on Hawaiian coral reefs

ハワイのサンゴ礁はとても人気があるが、サンゴ礁に集まった観光客によって傷つけられている可能性があることを示唆する論文が、Nature Sustainabilityに掲載される。

サンゴ礁は、生物多様性と美しさから人気があるとともに、重要な生態系でもあり、漁業を育み、沿岸を保護している。サンゴ礁観光は、資金を生み出し、サンゴ礁の保護に重点を置いたその土地の生活を支えるため、保全を促進し得る。観光は、持続可能な開発目標に関する国連の2030アジェンダにおいて、海洋資源や沿岸資源の持続可能な利用を促進する手段としてあげられている。しかし、観光客は、例えば周辺の海を汚染することで、生体サンゴを直接あるいは間接的に傷つける可能性がある。

今回Bing Linたちは、ハワイのサンゴ礁を訪れた観光客が2018年から2021年にかけてインスタグラムに投稿した25万件を超えるデータと、生体サンゴ被度の航空地図を組み合わせた。著者たちは、AIを用いて、サンゴ礁の地図画像を2メートルの分解能で16メートルの深さまで解析した。その結果、生体サンゴ被度が高い接近可能なサンゴ礁ほど、より頻繁に観光客が訪れていたが、最も人気の高いサンゴ礁では、サンゴが海岸に近いほど、あまり人気のないサンゴ礁と比べてより劣化していたことが分かった。著者たちは、水の汚染量は劣化の主な原因ではなかったことが見いだされたと指摘し、劣化の原因は、ダイバーやシュノーケリングをする人がサンゴ礁と接触したり踏みつけたりすることによるものなど、観光客の訪問自体がであったと示唆している。

サンゴ礁の劣化の原因としては、気候変動などの全球的で大規模な影響が知られている。しかし、著者たちは、サンゴ礁を維持するためには局地的な影響が重要であり、考慮されるべきであると主張している。

doi: 10.1038/s41893-022-01021-4

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