自然災害:世界中の港湾が受けた被害が年間75億米ドルを超えているという試算
Communications Earth & Environment
2023年1月13日
Natural hazards: Damage to ports worldwide may cost over US $7.5 billion per year
世界の港湾に関する分析研究が行われ、全体の86%以上が毎年3件を超える自然災害にさらされており、自然災害の被害額が全世界で年間75億米ドル(約9750億円)を超えていることが示唆された。この研究について報告する論文が、Communications Earth & Environmentに掲載される。
海面水位が上昇すると、勢力の大きい台風や熱帯低気圧の発生可能性が高まり、世界中の港湾は、複数の陸域自然災害と海洋自然災害(例えば、低気圧の強風、地震、洪水など)にさらされる。
今回、Jasper Verschuurたちは、オランダ、米国、インド、オーストラリア、中国などの1340の港(ロッテルダム港やロサンゼルス港など)に関する世界規模のデータベースをまとめた。Verschuurたちは、港湾の直接的な被害だけでなく、港湾から1キロメートル以内のインフラ(道路、鉄道、電線など)の破壊を原因とする港湾活動の中断も分析対象とした。港湾の直接的な被害と周辺インフラの被害を考慮に入れると、推定被害額は、年間75億米ドルにのぼった。さらに、復旧工事に伴う作業中断と港湾の稼働停止によって、年間631億米ドル(約8兆2000億円)相当の貿易がリスクにさらされる可能性がある。
Verschuurたちは、分析対象となった港湾の94%(1260港)が少なくとも年間1件の自然災害にさらされており、86.2%(1155港)が年間3件を超える自然災害にさらされていることを明らかにした。このデータベースに登録された1340港のうち、160港では港湾固有の被害額が年間1000万米ドル(約13億円)を超えるリスクがあり、21港では5000万米ドル(約65億円)を超えるリスクがあることが判明した。Verschuurたちは、貿易へのリスクが特に顕著なのが、経済が海上交易に大きく依存している小島嶼開発途上国(北マリアナ諸島、グアム、フィリピンなど)である点に注意を促している。
1ドル=130円とした
doi: 10.1038/s43247-022-00656-7
注目の論文
-
11月13日
地球科学:2022年のマウナロア火山の噴火を調査するNature Communications
-
11月12日
気候変動:南極の氷が人為的な温暖化が1.5℃の温暖化の限界に近づいていることを示唆しているNature Geoscience
-
11月12日
惑星科学:ボイジャー2号が天王星をフライバイしたのは太陽の異常現象の最中だったNature Astronomy
-
11月8日
気候変動:プライベート航空による二酸化炭素排出量の大幅な増加Communications Earth & Environment
-
11月7日
地球科学:インドプレートとユーラシアプレートの収束の加速を説明するNature
-
10月25日
保護:深刻な絶滅の危機に瀕するスマトラトラに対してより大きな保護が必要Scientific Reports