気候変動:世界の食料システムに由来する温室効果ガス排出だけで2100年の気温が約1℃上昇するかもしれない
Nature Climate Change
2023年3月7日
Climate change: Global food system emissions could add nearly 1 °C to warming by 2100
地球の食料システムを原因とする温室効果ガスの排出は、2100年の地球の気温を今より約1℃引き上げる結果をもたらすかもしれないことが、気候モデルを用いた研究で明らかになった。また、生産と消費の仕方を改善することで、予測された温暖化の55%を回避できるかもしれないことも示された。この研究を報告する論文が、Nature Climate Changeに掲載される。
世界の食料生産は、温室効果ガス、特にメタン、亜酸化窒素、二酸化炭素の大きな発生源になっている。こうした相互作用のモデル化を試みる研究が行われてきているが、継続的な排出量や排出量の変化を説明できるモデルになっておらず、それぞれの種類の温室効果ガスの重要性を評価するために任意の期間(100年が一般的)を設定する必要があるため、寿命の短い温室効果ガスか寿命の長い温室効果ガスのいずれかについて、気候に対する影響が歪曲されてしまっている。
今回、Catherine Ivanovichたちは、現在の世界の食料生産パターンと食料消費パターンを用いて、5つの人口シナリオの下で21世紀末までの温暖化にどのような影響が生じるのかを予測した。Ivanovichたちは、広範な文献調査に基づいて、94品目の食料の現在の温室効果ガス排出量の詳細な一覧表を作成した。その結果、食料システムだけで、21世紀末の気温を約1℃引き上げるという寄与をするかもしれないことが判明した。メタンが、食品システムに関連する温暖化の原因の約60%を占め、二酸化炭素と亜酸化窒素が、それぞれ約20%を占めている。また、相対的寄与が最も大きい食品(反芻動物とそれ以外の動物の肉、乳製品と米)の生産の仕方が改善されれば、2100年について予測された気温上昇のうちの約4分の1を回避できるかもしれないことも明らかになった。
Ivanovichたちは、医学的に推奨される食事を全世界で採用すること(つまり食事に含まれるタンパク質の量を一部の地域で増やし、一部の地域で減らすこと)とエネルギーの脱炭素化と食品廃棄物の削減のための協調的な取り組みを組み合わせることで、2100年について予測された気温上昇の約4分の1をさらに回避できるかもしれないと主張している。
doi: 10.1038/s41558-023-01605-8
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