注目の論文

環境:沿岸生物種が太平洋ゴミベルトで生息・生殖していた

Nature Ecology & Evolution

2023年4月18日

Environment: Coastal species found living and reproducing in the Great Pacific Garbage Patch

通常は西太平洋の沿岸海域にしか生息していない海洋無脊椎動物が、東部北太平洋亜熱帯環流の公海上(太平洋ゴミベルトとしても知られる)でプラスチックゴミに乗って生息・生殖していることを明らかにした論文が、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。

海洋生物種は、浮遊ゴミに乗って外洋に広がっていくことが知られ、プラスチック製の物体は、天然の浮遊物(経時的にはるかに迅速に分解する)よりも耐久性の高い表面を提供している。しかし、さまざまな種類の海洋生物種にとって、増加しつつあるプラスチック構造物が、外洋でどれだけ永続性の高いすみかとして機能できているのかは、よく分かっていない。

Linsey Haramたちは今回、2018年11月~2019年1月に、東部北太平洋亜熱帯環流から浮遊プラスチックゴミ105点を収集し、分析ゴミの70.5%に、生きている沿岸生物種の証拠を見いだした。ゴミには海洋無脊椎動物が484個体認められ、そのうち80%は、通常は沿岸環境に見られる種だった。プラスチックに乗って浮遊しているのが見つかった節足動物や軟体動物などの沿岸生物種の数は、外洋生物種の3倍を超えた。全生物の多様性が最も高いのはロープであり、沿岸生物種の多様性は漁網で最も高いことが分った。ヒドロ虫類(クラゲやサンゴの近縁生物)や端脚類、等脚類(どちらも甲殻類)を含め、沿岸種と外洋種の両方に有性生殖の証拠も認められた。

著者たちは、今回の発見は、数年にわたって数千マイルを流された可能性があるプラスチックゴミに乗って沿岸由来の生物種が生存・生殖でき、それが洋上の新たなタイプの生態学的群集になっていると考えられると示唆している(著者たちはこれを「neopelagic community(新外洋群集)」と命名)。そうした生物種の生存の実態や、その生態学的・進化的な影響を明らかにするには、さらなる研究を行う必要がある。

doi: 10.1038/s41559-023-01997-y

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