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気候変動:適した気候を求めて移動する植物種の目的地はそれほど遠くではない

Nature Climate Change

2023年4月25日

Climate change: Plant species might not need to move far for favourable climates

Nature Climate Change

気候が変化したために、植物種が、適した生育地を求めて移動する場合、短距離の移動で済む可能性があるとした報告が、Nature Climate Changeに掲載される。以前のモデル研究では、植物の地理的分布域の大幅な変化が必要になると予測されたが、今回の研究では、それと対照的な結果が得られた。

気候変動によって環境が変化すると、多くの生物種が、生き残るために適応するか、移動するかを選ばざるを得ないと広く一般に予測されており、この予測が、現在の保全政策を形作っている。以前の研究では、適した気候を求める植物種は長距離を移動する必要が生じる可能性があると示唆されたが、これらの研究では、広域気候データが用いられていた。しかし、このデータは、生物が経験する非常に不均質な微気候条件を正確に表していない。

今回、Ilya MacleanとRegan Earlyは、歴史データ(1977~1995年)を用いてヨーロッパのヒースランド(ヒースなどの低木が群生する荒地)と草原で生育する植物分類群(244群)の分布をモデル化し、このモデルを使用して2003~2021年の植物の生育分布を推定し、気候変数の影響を評価した。そして、MacleanとEarlyは、広域気候データと微気候データを使って、3種類のグリッド分解能(長さ約50キロメートル、5キロメートル、100メートルのグリッド)を比較した。最大のスケール(約50キロメートルのグリッド)での分析によれば、植物種は、気候の変化に合わせて26年以内に3.7~62.4キロメートル(中央値14キロメートル)移動しなければならなかった。これに対して100メートル分解能の微気候データを使用した場合には、適した微気候までの移動距離が、同じ植物種で、26年間で114メートル(中央値)、つまり年間4.4メートルに過ぎなかった。MacleanとEarlyは、このような短い距離の移動の方が、実際に観察された植物種の移動パターンに近いことを明らかにした。

MacleanとEarlyは、今後の保全活動では、植物種の過去の地理的分布域の範囲内にある適切な微気候の地域を保護することを優先すべきだと提唱している。

doi: 10.1038/s41558-023-01650-3

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