がん:個別化mRNAワクチンによる膵臓がんの治療に光明
Nature
2023年5月11日
Cancer: Personalized mRNA vaccines show promise in pancreatic cancer
個別化mRNAワクチンと他の治療法を併用して膵臓がんの一種である膵管腺がん(PDAC)の患者を治療した場合に、強い免疫応答が誘導され、がんの再発を遅らせる効果が生じ得ることを報告する論文が、Natureに掲載される。
膵管腺がんは、米国内のがんによる死亡の原因の第3位であり、生存率が低く、過去60年間12%程度で低迷している。その再発を外科的療法と薬物療法の併用によって遅らせることは可能だが、成功率は低い。最近の文献では、大部分の膵管腺がん症例で、ネオアンチゲン(特定のタイプのDNA変異が起こった後で腫瘍の表面に出現することがある細胞表面タンパク質)の値が高いことが示唆された。このネオアンチゲンを標的とする個別化ワクチン療法は、T細胞の活性を高めて、患者の転帰を改善できる可能性があると考えられている。
Vinod Balachandranらは、第I相臨床試験において、膵管腺がん患者16人に対するアジュバント療法として、autogene cevumeran(個別化mRNAワクチンの一種)を投与し、化学療法と免疫療法を併用した。その結果、患者の50%で、強いT細胞応答が観察され、このワクチンが免疫応答の改善を誘導することが示された。また、18カ月間の経過観察の後、患者において強い免疫応答が観察されることと再発するまでの期間が長期化したことが相関していた。これに対して、ワクチンに応答しなかった患者は、最初の評価から13.4カ月後(中央値)に再発した。
以上の結果は、膵管腺がんの治療における個別化mRNAワクチンの可能性を示すだけでなく、疾患の治療手段としての個別化mRNAワクチンの一般的な有効性を示す証拠となった。Balachandranらは、この初期結果は、サンプルサイズが小さいという問題があったものの、今後、研究の規模を大きくして、膵管腺がんの治療法としての個別化mRNAワクチンを調べる必要があることを示していると指摘している。
doi: 10.1038/s41586-023-06063-y
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