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気候変動:低排出シナリオの下でも2030年代の夏には北極海が無氷状態に

Nature Communications

2023年6月7日

Climate change: The Arctic may be sea-ice-free in summer by the 2030s

Nature Communications

このほど気候のモデル化研究が実施され、低排出シナリオの下であっても、早ければ2030年代に、9月の北極海から海氷がなくなるかもしれないことが示唆された。この2030年代という予測は、これまでの予測と比べて約10年前倒しになっている。このことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この最新の知見は、人間活動が北極に及ぼす重大な影響を明確に示しており、近い将来、北極に海氷のない季節が生じることに対して、計画を立てて、適応することの重要性を示している。

北極海の海氷は、ここ数十年の間、全ての季節を通じて急速に減少しており、2000年以降は減少のペースが加速した。北極から海氷がなくなると、北極域内外の人間社会と自然生態系が影響を受けて、例えば、海洋活動の変化、北極の温暖化のさらなる加速、炭素循環の変化などが起こると考えられている。しかし、人間活動が海氷の減少に対してどのように寄与しているかや、低排出シナリオ(SSP1-2.6)の下でも北極海から海氷がなくなるかについては、依然として不確かな点が残っている。

今回、Seung-Ki Minらは、北極海の海氷減少に対する人間活動の寄与を解析し、その将来的経路を予測するために、1979~2019年の観測データを用いて気候モデルのシミュレーションの絞り込みを行った。その結果、北極の海氷減少に対する人間活動の影響が年間を通じて観測され、その主な原因が温室効果ガス排出量の増加であることが示唆された。一方、エーロゾルと自然要因(太陽活動や火山活動など)の寄与がはるかに小さいことも判明した。また、Minらは、全ての排出シナリオの下で、2030~2050年に9月の北極海から海氷がなくなる可能性があると予測している。以前の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書で論じられた評価では、低排出シナリオにおいて夏の北極海の無氷状態を予測しておらず、今回の研究ではそれとは対照的な予測が示された。

doi: 10.1038/s41467-023-38511-8

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