注目の論文

地球科学:世界の貯水池の利用可能水量が減り続けている

Nature Communications

2023年6月14日

Earth sciences: Declining global reservoir reserves

世界の貯水池は、新しい貯水池の建設により総貯水容量が増加しているにもかかわらず、過去20年間、利用可能水量が減り続けていることを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この期間中、利用可能水量が特に大きく減少したのがグローバルサウスで、主に増加したのはグローバスノースだった。今後、流出水量の減少と水需要の増加が予測されているため、今回観察された貯水池の新設による利用可能水量の減少という傾向は、今後も続く可能性が高く、水供給に影響を及ぼすと考えられる。

世界人口の増加と気候の温暖化という状況下で、利用可能水量を確保するために非常に重要なのが地表貯水池だ。人類は、貯水池を使って、地球の淡水資源を管理する能力を高めたが、その反面、貯水池は、環境や社会に悪影響を及ぼした。ただし、貯水池の利用可能水量とそれに対応する傾向は、全球スケールで定量化されていない。

今回、Yao Li、Huilin Gaoらは、人工衛星データを用いて、1999~2018年の世界7245カ所の貯水池の貯水量の変化を算出した。その結果、世界の貯水池の総貯水容量は、新規建設によって年間約28立方キロメートルのペースで増加していることが分かった。それにもかかわらず、これらの新しい貯水池の水量は、期待されたレベルに達していない。今回の研究で、貯水池の水量が最も減少しているのは南米とアフリカであることが判明した。これらの地域では、人口増加に伴って水需要が増加している。これとは対照的に、北米やヨーロッパの地域を含むグローバルノースでは、水量が容量100%に達した貯水池が増えている。

今回の知見は、有限な水資源に関連した課題を解決する上で、貯水池の新規建設を続けるだけでは不十分で、新たな管理戦略(特に貯水池の規制に関する管理戦略)が必要なことを示唆している。また、今回の研究で、新しい貯水池を建設することの社会経済的利益を再評価するための新たな視点がもたらされ、開発途上国における水需要の増加と利用可能水量の減少の間の緊張関係に関する知見が得られた。

doi: 10.1038/s41467-023-38843-5

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