免疫学:免疫レジリエンスを調べて「病気になりにくい人」が存在する理由を調べる
Nature Communications
2023年6月14日
Immunology: Investigating immune resilience and why some may get sick less often
さまざまな免疫機能を維持し、または回復させる「免疫レジリエンス」が、感染症や炎症性疾患に反応する能力に関連している可能性があることを示した論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の知見は、感染症や炎症性疾患が関係した数々の研究を調べることで得られたもので、生涯にわたって優れた健康状態であり続ける人が存在する理由についての理解を向上させる可能性がある。
長命で、感染症や炎症性疾患にかかりにくい人が存在する理由は、十分に解明されていない。感染症や炎症性疾患は免疫系に変化をもたらし、疾患に対する反応の大きさや質には個人差がある。感染症や炎症性疾患に対する最適な反応は、推定寿命に関連していることが示唆されているが、この点については、さらなる研究が必要とされる。
今回、Sunil Ahujaらは、ヒトと動物を対象としたさまざまな研究のデータを照合し、それぞれの状況における免疫レジリエンスを測定した。4万8500人以上のヒトと複数の動物モデルの研究データを調べた結果、さまざまな感染症や炎症性疾患にさらされた時や加齢過程で、免疫レジリエンスを維持する個体が存在することが判明した。Ahujaたちが今回の研究で調べたさまざまな疾患(例えば、HIV、症候性インフルエンザ感染症、新型コロナウイルス感染症〔COVID-19〕、敗血症、再発性皮膚がん)において、感染症や炎症性疾患にかかった患者の免疫レジリエンスが、その患者の寿命の延長と良好な健康転帰に関連していた。また、今回の研究では、最適レベルの免疫レジリエンスが、全ての年齢で検出され、女性に多く見られる可能性があり、良好な免疫に依存した健康転帰に関連しているかもしれないことが示唆された。
Ahujaらは、将来的には、予後や健康転帰(寿命や感染への反応など)の管理に関するモニタリングや有益な情報の提供に免疫レジリエンスを使用できるかもしれないと主張している。ただし、炎症性疾患や感染症の診断、予測、管理を目的とする免疫レジリエンスの測定については、その有効性と有用性を判断するための研究をさらに行う必要がある。
doi: 10.1038/s41467-023-38238-6
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