環境:ヨーロッパの巨大洪水の予測
Nature Geoscience
2023年11月7日
Environment: Anticipating megafloods across Europe
ヨーロッパの巨大洪水が、水文学的に似た他の地域でこれまでに起きた洪水の観測結果から予測可能であることを報告する論文が、Nature Geoscienceに掲載される。
巨大洪水は、ある場所で過去に経験した洪水を大きく超える規模の洪水であり、破滅的な被害と人命の損失をもたらす。巨大洪水は、2021年にドイツのライン川の支流で起きた極端な事象などのように、極めてまれな性質と十分な観測記録がないことにより予測することが困難である。過去に前例のない洪水を予測することの困難さにより、洪水への十分な備えができず、対応策が不十分なことで影響が深刻となる可能性がある。
今回Miriam Bertolaらは、1810~2021年のヨーロッパ全土の8000カ所の水位観測所における大陸規模の河川放水量の観測結果を分析し、510件の巨大洪水を特定した。Bertolaらは大陸全体で、同じような水文学的属性を持つ地域では、非常によく似た極端な事象が生じる傾向にあることを見いだした。Bertolaらは、観測された巨大洪水の95.5%は、同じような場所で過去に起きた事象に基づいて予測可能だったと示唆している。Bertolaらは、一つの場所における巨大洪水の観測結果は、同じような属性を持つヨーロッパ全体の他の場所で予想される洪水の大きさを示している可能性があると提案している。
今回の大陸規模の手法は、洪水への適切な防災対策と備えを実施するための情報を提供するのに役立つ可能性がある。Bertolaらは、この知見は、洪水のリスクを評価する際に地域的な流域を超えて、他の地域や流域で起きた事象を考慮することの重要性を立証していると結論付けている。
doi: 10.1038/s41561-023-01300-5
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