社会科学:若者のメンタルヘルスにやさしい都市の作り方
Nature
2024年2月22日
Social sciences: How to make cities mental health friendly
若者のメンタルヘルスに理解のある都市を作る上で最も重要な要素のランキングを示した論文が、今週、Natureに掲載される。この中で今後注力すべき重要なポイントとして浮き彫りになったのが、若者が集まり、有意義な関係を築くための公共空間だ。今回の知見から、若年住民のウェルビーイングと健全なメンタルヘルスを支援する力を秘めた都市を設計することは可能だが、複数の部門にわたる協力体制を構築して、もっとインクルーシブな都市を作る必要があることが示された。
25歳未満の若者は、教育機会、社会的機会、就労機会のために都市に移住する可能性が最も高い人口層だ。しかし、都市への移住は、メンタルヘルスにとって有害なことが明らかになっている。それにはいくつかの理由があり、例えば、暴力、緑地の欠如、環境有害物質などがある。都市で育つ子どもや若者の数は増加しており、都市部の青少年のメンタルヘルスを改善するための対策が必要とされている。
今回、Pamela Collinsらは、53カ国から都市生活と青少年のウェルビーイングに関連するさまざまな分野の専門知識を持つ研究者、政策立案者、若年の都市住民など518人を集めて、質問票を使った調査を行った。これらの調査対象者は、質問票に複数回回答して、若者のメンタルヘルスにやさしい居住環境を提供するために最も適した都市の特徴を記述し、その後、それらの特徴について重要度の高い順に順位を付けた。
最も重要とされた都市の特徴の1つは、若者がつながり、学び、交流できる自由で安全なコミュニティー空間を利用できることだった。加えて、確実な就労機会、支援的な教育システム、質の高い医療が非常に重要な特徴であることも明らかになった。メンタルヘルスケアにおける不平等に対処し、若者が都市開発の計画過程に参加することの重要性も取り上げられた。さらに、この調査では、マイノリティーグループに対する偏見の悪影響に注目が集まり、個人レベルの差別と構造的な差別の根絶が政策対応として上位にランクされた。
今回の研究の一部は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の期間中に行われ、このパンデミックが都市の若者のウェルビーイングに深刻な影響を及ぼしたことが浮き彫りになった。今回のデータは、このパンデミックによってコミュニティー空間と社会的ネットワークの重要性が高まったことを示唆している。これらの要素が欠如していたり、利用可能性が制限されていたりすると、個人のさらなる孤立やメンタルヘルス上の悪影響の一因になる可能性がある。
こうした枠組みは、今後の都市計画によって都市の若者のメンタルヘルスとウェルビーイングを改善するための優先事項を明確に示しており、特に既存の不平等とパンデミックによってもたらされた被害を軽減することに重点が置かれている。ここで重要なのは、いかなる対応策においても既存の特権を増強するようなプログラムを設計しないように注意すべきであり、そのようなイニシアティブの計画と設計は若者を中心に据えて行うべきであることが、この枠組みで強調されていることだ。
doi: 10.1038/s41586-023-07005-4
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