考古学:アフリカからのヒトの分散が乾燥期に起こっていた可能性
Nature
2024年3月21日
Archaeology: Dispersal of humans out of Africa may have occurred during arid period
過去に起こったアフリカからのヒトの移動のうち、一番最近(今から10万年にもならない前)の最も広範囲にわたる移動が、インドネシアのトバ火山の超巨大噴火後の著しく乾燥した期間中に起こっていた可能性があることが示された。このことを報告する論文が、Natureに掲載される。
アフリカからのヒトの分散は、湿潤期に「緑の回廊」が形成され、ヒトの移動が容易になったために起こったと一般的に考えられている。乾燥期には、ヒトの移動が制限され、食料を十分に入手できない状態(食料不安)になったと考えられている。
今回、John Kappelmanらは、エチオピア北西部のシンファ川近くにある遺跡を調査した。この遺跡からは、石器の製造による削られた石片と動物の遺骸が見つかり、ヒトの存在を示す証拠となった。また、堆積物試料中のガラス片の化学分析では、これらのガラス片が、トバ火山の超巨大噴火に由来するものであることが明らかになり、この遺跡付近にヒトが存在していたのは約7万4000年前の中石器時代(約28~5万年前)とされた。ダチョウの卵の殻と哺乳類の歯の化石の安定同位体分析からは、当時の環境は著しく乾燥していたことが示された。
Kappelmanらは、このように著しく乾燥した気候であったことが、逆説的ではあるが、その時代の遺跡付近での魚類への依存度が高かったことを説明できるとし、乾燥期に河川が縮小したために魚類が小さな池に閉じ込められ、当時の狩猟民がおそらく弓矢を使って魚類を捕獲していた可能性があると述べている。非常に乾燥した時期には、こうした小さな池に魚資源がなくなれば、ヒトは移動する必要が生じたと考えられ、ヒトが分散するための「青の回廊」が出来上がった可能性がある。
Kappelmanらは、この遺跡に記録された行動の柔軟性は、この遺跡に存在したヒトが超巨大噴火の余波を生き延びる上で役立ち、現生人類がアフリカから最終的に分散し、世界中に拡大した際に遭遇した多様な気候や生息地で繁栄する上で極めて重要だった可能性が非常に高いという見解を示している。
doi: 10.1038/s41586-024-07208-3
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