気候変動:地球温暖化によって食料価格の高騰がさらに進むかもしれない
Communications Earth & Environment
2024年3月22日
Climate change: Global warming may further inflate food prices
地球温暖化による食料インフレ率と総合インフレ率の上昇が見込まれ、2035年には、予想されている気温上昇によってインフレ率が年間最大3.2ポイント、総合インフレ率が年間最大1.2ポイント上昇する可能性があることを報告する論文が、Communications Earth & Environmentに掲載される。また、今回の知見は、高所得国と低所得国の両方が気候に起因するインフレを経験するが、グローバルサウスの国々がより大きな影響を受けることも示唆している。
世界経済は、気候変動や極端な気象に対する感受性が高く、その原因は、気候変動や極端な気象が食料生産、労働、エネルギー需要や人間の健康に影響を及ぼしていることにある。気象がインフレに及ぼす影響を理解することは、将来の気候変動がインフレリスクと世界経済にどのような影響を及ぼすかを予測するために役立つ。
今回、Maximilian Kotzらは、1991~2020年の121カ国の月間消費者物価指数と気象データを分析し、その結果を物理的気候モデルによる予測と組み合わせて、2030~2060年の温暖化予測に基づいたインフレに対する影響を評価した。Kotzらは、2035年に予測される地球温暖化による気温上昇という条件の下で、食料インフレ率が年間0.9~3.2ポイント上昇し、総合インフレ率が年間0.3~1.2ポイント上昇するという推定結果を示した。Kotzらは、これが高所得国と低所得国の両方に影響を及ぼすが、一般的にはグローバルサウス、特にアフリカと南米の国々がより大きな影響を受けると予測している。
この予測は、気温上昇が、低緯度地域では年間を通じてインフレ率を上昇させるが、高緯度地域ではこの影響は夏にのみ生じることを示唆している。また、Kotzらは、2022年夏の極端な高温によってヨーロッパの食料インフレ率が0.67ポイント押し上げられ、2035年の温暖化シナリオの下では、このインフレ押し上げ効果が30~50%増幅される可能性があると推定した。
Kotzらは、気候変動は今後の食料価格を上昇させる可能性が高いが、温室効果ガス排出削減策と技術を活用した適応策によって、世界経済に対するこうしたリスクを大きく低減させることができるという見解を示している。
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シュプリンガー・ネイチャーは、国連の持続可能な開発目標と、学術論文誌や書籍に掲載されている関連情報や証拠の認知度を高めることに尽力しています。このプレスリリースに記載されている研究は、SDG 2(飢餓をゼロに、Zero Hunger)に関係しています。詳細については、こちらを参照してください。(https://press.springernature.com/sdgs/24645444 )
doi: 10.1038/s43247-023-01173-x
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