注目の論文

生態学:温暖化と乾燥によってハチ類の多様性が脅かされている

Nature

2024年3月28日

Ecology: Bee diversity threatened by warming and aridity

気候変動に関連した温暖化と乾燥のために、米国南西部のハチ類の多様性が脅威にさらされていることを明らかにした論文が、Natureに掲載される。1つの地域で乾燥度が上昇すると、耐性が最も優れた種が、その地域の優占種になると予想される。このような多様性への脅威が生じると、花粉媒介者に依存する生態系の健全性に影響が及ぶ可能性がある。

花粉媒介昆虫の個体数減少に関する文献は数多く存在し、こうした減少の決定的な要因の1つが気候変動であることを示す証拠が増えてきている。しかし、大部分のハチ種については、気候に起因するハチ集団の変化を理解し、将来の変化傾向を予測するためのデータが十分集まっていない。

今回、Melanie Kazenelらは、米国ニューメキシコ州の2002~2019年(2016~2017年を除く)の16年間のハチ類の個体数データと実験的に測定した高温・乾燥耐性のデータを組み合わせて、気候の変化に対するハチ集団の感受性がどれほど高いかを調べた。次に、気候感度モデルを使用して、これらの集団が将来どのように反応するかを予測した。

ハチ類の個体数は個体群レベルで乾燥度と強く相関し、個体群の71%(243種)が乾燥指数の変化に高い感受性を示した。このモデルでは、乾燥度に対する感受性を示したハチ種(243種)のうち、2100年までに個体数が増加するものが10%、減少するものが46%、実質的に変化しないものが44%と予測された。また、Kazenelらは、ハチ群集内の種の多様性が減少し、干ばつ条件に対する耐性に優れた体サイズの大きなハチ分類群がハチ群集を優占するようになるかもしれないと予測した。こうした変化は、生態系レベルで深刻な結果をもたらす可能性がある。送粉が広範囲にわたって行われて成功する上で、種の多様性が非常に重要な役割を担っているからだ。以上の結果は、気候変動に起因する生理的ストレス、特に乾燥が、花粉媒介者の適応度と個体数だけでなく、より広範な生態系に影響する極めて重要な因子であり、生物保全活動でこの点に取り組む必要があると考えられることを示唆している。

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シュプリンガー・ネイチャーは、国連の持続可能な開発目標と、学術論文誌や書籍に掲載されている関連情報や証拠の認知度を高めることに尽力しています。このプレスリリースに記載されている研究は、SDG 13(気候変動に具体的な対策を、Climate Action)に関係しています。詳細については、こちらを参照してください。(https://press.springernature.com/sdgs/24645444

doi: 10.1038/s41586-024-07241-2

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