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植物病害:アイルランドのジャガイモ飢饉以前に米国でまん延したジャガイモ疫病のマッピング

Scientific Reports

2024年2月16日

Plant disease: Mapping the spread of potato blight prior to the Irish potato famine

Scientific Reports

アイルランドのジャガイモ飢饉(1845~1852年)の原因となった真菌様病原体のジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)が米国で引き起こしたジャガイモ疫病の大流行(1843~1845年)を示す正確な地図が初めて作製された。このことを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。今回の知見は、ヨーロッパに到達する前のジャガイモ疫病のまん延状況に関する我々の理解を深める。

今回、Jean Ristainoらは、北米でジャガイモ疫病が大流行した1843~1845年に米国で発表された農業報告書を分析し、ジャガイモ疫病のまん延を示した地図を作製した。Ristainoらは、ジャガイモ疫病の最初の報告が1843年にニューヨーク州、ペンシルベニア州、ニュージャージー州、デラウェア州、コネチカット州の5地点であったことを明らかにした。その後、ジャガイモ疫病は、1844年末までにさらに米国の6州(オハイオ州、マサチューセッツ州、ロードアイランド州、バーモント州、ニューハンプシャー州、メイン州)とカナダのノバスコシア州の107地点に広がった。1845年になると、ジャガイモ疫病は新たに米国の4つの州(ミシガン州、イリノイ州、インディアナ州、メリーランド州)とカナダのニューブランズウィック州の53地点に広がった。当時の報告書には、ジャガイモ疫病によってジャガイモの収量が33~50%減少したことが示されていた。

また、Ristainoらは、この手法を用いて、1843~1845年の大流行の際に発表されたジャガイモ疫病の原因と防除法に関する学説の特徴を明らかにした。当時、ジャガイモ疫病の原因として提案されていたのは、昆虫、気象条件、ジャガイモ品種の質の低さ、真菌などだった。さらに、Ristainoらは、広範な文献に記された「真菌がジャガイモ疫病の原因なのか、結果なのか」という論争の存在を明らかにした。ジャガイモ疫病の防除法として推奨されていたのは、酸化カルシウム(石灰)、硫黄、硫酸銅、塩だった。そして、ノバスコシア、フランス、ボゴタ(コロンビア)などの地域から輸入されたジャガイモの種芋が感染源として疑われていた。

以上の知見を合わせると、米国におけるジャガイモ疫病の蔓延と19世紀半ばの病害に関する国民の理解を洞察する手掛かりが得られる。

doi: 10.1038/s41598-024-52870-2

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