公衆衛生:米国におけるサイクロンによる超過死亡数の定量化
Nature
2024年10月3日
Public health: Quantifying excess deaths from cyclones in the USA
米国の平均的な熱帯サイクロンは7,000-11,000人の超過死亡者を発生させ、これらのサイクロンは、1930年から2015年までの大西洋沿岸の死亡者の約3.2-5.1%を占めていることを報告する論文が、Natureに掲載される。超過死亡の増加は、サイクロン発生後約15年間続く可能性がある。これらの知見は、熱帯サイクロンによる死亡者が、これまで考えられていたよりも広範な公衆衛生上の問題である可能性を示している。
熱帯サイクロンは、米国の海岸線における定期的な脅威であり、インフラへの被害、人口の移動、社会的混乱、および死亡を引き起こす。自然災害が人口に及ぼす影響に関するこれまでの分析は、主に災害が最も直接的な危険や原因である直接死(洪水による溺死など)に焦点を当ててきた。しかし、研究者らは、直接的な死者数だけを集計することは、熱帯サイクロンのような自然災害の真の影響を過小評価する可能性があるという仮説を立てている。なぜならば、災害はしばしば、被害を受けた人々に対する他の脅威(医療へのアクセスの低下や生活費の増加など)のドミノ効果を引き起こすからである。
Solomon HsiangおよびRachel Youngは、1930年から2015年の間に米国の海岸線に直接影響を与えた501の熱帯サイクロンの影響をモデル化した。連邦政府の統計によると、これらの嵐による直接的な死者は平均24人だったが、連鎖的な影響を考慮すると、熱帯サイクロンによる間接的な死者は約7,000-11,000人に上ることがわかった。
HsiangとYoungは、米国疾病管理予防センター(CDC = Centers for Disease Control and Prevention)のデータを分析した結果、これらの超過死亡は、糖尿病、自殺、乳幼児突然死症候群、あるいは記録されていないその他の原因を含む一般的なカテゴリーによるものであることを発見した。心血管系疾患が次に多く、次いでがんであった。この分析では、熱帯サイクロンが死亡率の上昇に関係していることは明らかになったが、その根本的なメカニズムは明らかにされていない。しかし、著者らはこの関連を説明する5つの要因を提唱している。例えば、失業による経済的混乱や、サイクロン後の修理に必要な支払いが、将来の医療支出を減少させるかもしれない。そして、復興支援のための政府の対応が医療インフラへの支出を減らすかもしれない。また、社会的ネットワークの変化、自然環境、およびストレスなども一因として挙げられている。
著者らは、この研究の重要な限界として、分析において風速のみをモデル化し、高潮、降雨、あるいは洪水など熱帯サイクロンの他の特徴をモデル化していないことを指摘している。これらの知見は、熱帯サイクロンの影響を受けた人々の医療ニーズの真の大きさについての洞察を与えるものである。なぜならば、これらの人々は、自分たちの健康が嵐によってどれほど影響を受けたのかを認識していない可能性があるからである。
Young, R., Hsiang, S. Mortality caused by tropical cyclones in the United States. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07945-5
doi: 10.1038/s41586-024-07945-5
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