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惑星科学:ベンヌのサンプルから有機物、アミノ酸、塩類が検出される

Nature

2025年1月30日

Planetary science: Bennu samples yield organic matter, amino acids and salts

Nature

地球近傍小惑星ベンヌ(Bennu)から持ち帰った岩石と塵のサンプルには、アミノ酸やDNAとRNAの5つの核酸塩基を含む有機物、およびベンヌの母天体の初期に形成された塩類が含まれていることを報告する2つの論文が、Nature Astronomy Nature に掲載される。この発見は、初期の太陽系の化学に関する新たな洞察をもたらす。

2018年、OSIRIS-RExミッションは地球近傍小惑星ベンヌに到着し、地球の大気による変化を受けていない、地球上で分析するための未変質サンプルを採取した。

Nature Astronomy に掲載される論文で、Daniel Glavinらは、ベンヌのサンプルを分析し、数千種類の有機分子化合物を発見した。これには、地球上の生命体に存在する20種類のアミノ酸のうち14種類、既知の生物学ではまれまたは存在しない19種類の非タンパク質アミノ酸、そして5種類の生物学的核酸塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシル)がすべて含まれていた。また、ベンヌには窒素やアンモニア化合物が豊富に含まれていることも判明した。これらは、数十億年前に太陽系の遠く離れた寒冷地で形成されたものである。著者らは、ベンヌには地球上の生物よりもはるかに複雑な有機物が存在すると結論づけ、その母天体はアンモニアや揮発性氷が安定している太陽系外縁部から来た可能性があると示唆している。

Nature に掲載される論文で、Timothy McCoyらは、ベンヌのサンプルを分析し、ナトリウムを含むリン酸塩やナトリウムを豊富に含む炭酸塩、硫酸塩、塩化物、およびフッ化物など、さまざまな塩類鉱物を発見した。これらの塩類は、ベンヌの母天体の初期に存在した塩水が蒸発する過程で形成された可能性があり、かつて水が存在していたことを示している。水の存在の可能性と核酸塩基の存在は、生命誕生以前の有機合成(生命の構成要素を生み出すプロセス)の可能性について疑問を投げかけている。著者らは、さらなる調査が必要であると結論づけている。  

Glavin, D.P., Dworkin, J.P., Alexander, C.M.O. et al. Abundant ammonia and nitrogen-rich soluble organic matter in samples from asteroid (101955) Bennu. Nat Astron (2025). https://doi.org/10.1038/s41550-024-02472-9

McCoy, T.J., Russell, S.S., Zega, T.J. et al. An evaporite sequence from ancient brine recorded in Bennu samples. Nature 637, 1072–1077 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08495-6
 

 

 

doi: 10.1038/s41586-024-08495-6

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