生態学:幅広い生物種における遺伝的多様性の減少
Nature
2025年1月30日
Ecology: Genetic diversity decreasing among a wide range of species
過去30年間で600種以上の生物種において遺伝的多様性が減少していることを報告する論文が、Nature に掲載される。この調査結果は、遺伝的多様性の損失を防ぐための保全活動の必要性を明らかにしている。
人間活動による個体数の減少や種の分断化は、種内の遺伝的多様性の減少につながり、長期的な適応力や生存を脅かす可能性がある。このような人間活動に起因する要因には、極端な気象現象、生息地の破壊、および侵略的外来種の導入などがある。種の減少に対抗するための生態学的介入策を設計するにあたっては、遺伝的多様性の変化を予測することが極めて重要であるが、遺伝的多様性の損失の程度やパターンに関するデータは限られている。
Catherine Grueberらは、1985年から2019年の間に遺伝的多様性の変化を測定した882件の研究について系統的なレビューを行った。 データセットは628種の生物を対象としており、その内訳は動物(84.7%)、植物(12.7%)、菌類(1.9%)、および藻類(0.6%)であった。遺伝的多様性の損失は陸生種の大部分(90.2%)で観察されたが、海洋生物では損失の程度にばらつきがあった。遺伝的多様性の損失が最も大きかったのは鳥類と哺乳類であった。
著者らはまた、脅威と介入努力が個体群の遺伝的多様性に与える影響についても分類した。その結果、個体群の3分の2が少なくとも1種類の生態学的撹乱を経験していることが判明した。生態学的撹乱を受けていない種でも多様性の低下が観察されており、特定の事象に起因しない背景レベルの低下が示唆された。脅威の影響を受けた個体群の半分以下しか保全努力の対象となっていない。調査期間中に実施されたと報告された保全活動の分析結果から、影響を受けた個体群内の遺伝的多様性の損失を遅らせたり食い止めたりする可能性が示唆された。補充(個体群への新たな個体の追加)は、遺伝的多様性の長期的な増加を伴う唯一の介入策であった。
これらの結果は、人間活動に関連する遺伝的多様性の損失を遅らせるための的を絞った介入策の必要性を明らかにしており、そのような取り組みを最大限に効果的なものにするために活用できるかもしれない。
- Article
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- Published: 29 January 2025
Shaw, R.E., Farquharson, K.A., Bruford, M.W. et al. Global meta-analysis shows action is needed to halt genetic diversity loss. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08458-x
doi: 10.1038/s41586-024-08458-x
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