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遺伝学:古代のゲノムがヤムナ文化の起源の手がかりとなる

Nature

2025年2月6日

Genetics: Ancient genomes offer clues about the origins of Yamna culture

Nature

5,000年前にユーラシアステップ(steppe:草原)からヨーロッパへと移住した遊牧民ヤムナ(Yamna)族(別名ヤムナヤ〔Yamnaya〕族)の起源を明らかにする2つの論文が、今週のNature に掲載される。ウクライナとロシアの現代の古代ゲノムデータから、これらの遊牧民がどのようにして祖先、文化、そして恐らくは言語を広めていったのかについての洞察が得られた。

ヤムナの人々は、インド・ヨーロッパ語族をユーラシアステップ(東ヨーロッパからアジアに広がる地域)からヨーロッパ大陸に広めるのに重要な役割を果たしたと考えられている。しかし、この民族の正確な起源は依然として不明である。

今回Nature に掲載される2つの論文では、ポントス・カスピ海ステップ(Pontic–Caspian steppe:黒海とカスピ海に挟まれたヨーロッパとアジアにまたがる地域)とその周辺地域から最大435人の古代DNAを分析し、これまでサンプルが採取されていなかった多数の集団をデータセットに導入することで、ヤムナ人の起源を調査している。これらのデータは、地理的、考古学的、および時間的な情報を組み合わせて、ヤムナ人の歴史をモデル化するために使用された。

Iosif Lazaridisらは、ヤムナ人の新石器時代(銅器時代)の祖先について、3つの異なるサブグループ(クライン〔clines〕と呼ばれる、集団内の勾配に沿った測定可能な変化によって定義されるもの)を提案している。すなわち、コーカサス・下ヴォルガ(Caucasus–lower Volga)クライン、ヴォルガ(Volga)クライン、およびドニエプル(Dnipro)クラインである。これらのクラインは、既存のヨーロッパの集団と混ざり合った。コーカサス・下ヴォルガのクラインは、ヤムナ族の祖先の約80%を占め、また、青銅器時代のアナトリアの人々(現在のトルコの大半を占める西アジアの半島)の人々の祖先の約10%を占めている。著者らは、アナトリア人とインド・ヨーロッパ人の共通の祖先の言語を話す人々は、紀元前4400年から紀元前4000年の間にコーカサス・下ヴォルガから派生したと示唆しているが、この結論については慎重に扱うべきである。

2つ目の論文では、上記の分析に含まれた81人の個人のDNAの配列について説明しており、Alexey Nikitinらは、ヤムナ人の祖先は2つの波に分かれて広がり、その後、地元の住民と混ざり合ってヤムナ人が拡大していったと示唆している。著者らは、ヤムナ族の起源は、おそらく紀元前3635年から3383年頃のウクライナのミハイリフカ(Mykhailivka)であると提案している。この時期に、最も初期にサンプリングされた遺伝的にコアなヤムナ族の個体が特定された。

これらの結果は、ヤムナ族がどのようにして発生し、東ヨーロッパ全体に新しい文化と言語を広めていったのかについて、新たな光を投げかけている。

  • Article
  • Published: 05 February 2025

Lazaridis, I., Patterson, N., Anthony, D. et al. The genetic origin of the Indo-Europeans. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08531-5
 

  • Article
  • Published: 05 February 2025

 Nikitin, A.G., Lazaridis, I., Patterson, N. et al. A genomic history of the North Pontic Region from the Neolithic to the Bronze Age. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08372-2

doi: 10.1038/s41586-024-08531-5

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