【ネットワーク理論】都市の発展をもたらした道路網の分析
Scientific Reports
2012年3月2日
Networks: Mapping the roads to urban growth
都市化における道路網の進化は、「探索」と「稠密化」という2つの重要な過程によって特徴づけられていることが判明した。今回、Scientific Reportsに掲載される論文で、ネットワーク理論の定量ツールを用いて、イタリア北部のグロアネ地域での道路網の発達を調べた研究について報告されている。 世界の総人口に占める都市部居住者の割合は、最近になって50%を超えたが、都市化の諸過程の定量的評価は行われていなかった。今回、M Barthelemyたちは、ミラノの北にある地域での道路網の進化に関する約200年間のデータについて行われた実証的分析の結果を報告している。この地域は、大型都市計画の対象になったことがないが、道路が境界線となっている土地区画は、時間が経つにつれて、面積が均等化し、正方形に近くなっていた。また、Barthelemyたちは、当初は行き止まり路や三叉路が多く見られたが、その後、四叉路の数が増える傾向も確認した。2007年の時点では、道路網上の大部分の目抜き通りは、その地域で最も古い通りである傾向が見られ、目抜き通りが、長期間にわたって安定性を保つロバストなバックボーンとしての役割を果たしていることが明確に示されている。 Barthelemyたちは、こうした分析結果の原因として2つの重要な動態(「探索」と「稠密化」)を挙げている。探索は、新しい道路を引き金として都市部の境界線を超えた空間的進化が起こることをいい、稠密化とは、既存の都心の周辺における道路密度の上昇を意味する。分析対象となった200年間を見た場合、その初期においては、探索の方が一般的で、後年は、稠密化が優勢となった。この2つの過程は、過去200年間における技術的変化と経済的変化とは無関係に働いたと考えられている。今回の分析結果は、都市計画に役立つ可能性があるが、都市化の諸過程の一般性を確認するためには、他の地域や経済状態の事例をさらに調べる必要がある。
doi: 10.1038/srep00296
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