【海洋科学】アドリア海でのサメとエイの個体数減少の重要な要因としての漁業
Scientific Reports
2013年1月10日
Marine science: Fishing drives Adriatic shark and ray declines
アドリア海のサメとエイの群集の長期的変化を評価する研究が、今週発表される。サメとエイの群集が、近年、大きく枯渇しており、こうした変化の駆動要因として極めて重要なのが漁業であることが明らかになった。
サメ、エイなどの軟骨魚類が含まれる板鰓類の個体数は、漁業によって大きく減少する場合がある。しかし、こうした群集変化の駆動要因を評価する研究は、種間相互作用、脆弱性の変動と漁業の実施によって複雑化している。アドリア海は、地中海海盆において大規模に利用されている海域だが、東側(クロアチア側)と西側(イタリア側)では漁業の発達が一様でなかった。
F Ferrettiたちは、1948~2005年に実施された5回のトロール網での調査で得られた漁獲データを統合し、標準化して、アドリア海における板鰓類の個体数の長期的傾向を評価した。その結果、板鰓類の群集は、1948年の時点ですでに枯渇しており、その後の漁獲率は、94%以上も減少し、11種が検出されなくなったことが判明した。また、Ferrettiたちは、アドリア海東部での板鰓類の個体数の増加と多様性も報告している。このことは、過去においても、最近においても、イタリアの領海よりクロアチアの領海での漁獲圧が低いことを反映している。アドリア海で観察された個体数と多様性のパターンの大部分(強い代償的増加の不存在を含む)は、過去の海域利用の歴史と漁獲圧の変化によって説明できることが、今回の結果によって明らかになっている。
今回の研究では、アドリア海での漁業開発の慎重な計画や国際的管理と生態的回廊と大規模な保護区域の創設が、海域全体のサメとエイの群集の回復に役立つ可能性があることが示唆されている。
doi: 10.1038/srep01057
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