【生態】農薬の使用削減がコムギの収量に与える影響を評価する
Scientific Reports
2014年3月20日
Ecology: Assessing how reduced pesticide use affects wheat yield
フランスのフユコムギ栽培で農薬の使用量を減らすことによる収量減少を定量化する研究が行われ、その結果を報告する論文が、今週掲載される。
人口が増加するにつれて、作物収量がますます重要になっている。世界の平均穀物収量は1960年から1990年までに98%増加したが、その理由の1つが農薬使用の増加だった。しかし、農薬の使用は、人間の健康や環境を脅かすおそれがあるため、最近では、農薬の使用削減を目指す政策が実施されている。
今回、Laure Hossardたちは、フランス国内の4か所の研究実施施設の176の実験区域を用い、フユコムギ栽培において農薬使用量を半減させることで、収量にどのような影響が生じるのかを調べた。この研究では、従来型(農薬使用)、統合(減農薬)、有機(無農薬)という3つの条件下での作付体系実験が行われた。次に、Hossardたちは、統計モデルを適用して、農薬使用を50%、100%削減した場合のそれぞれの収量減少を推定した。ただ、使用される農薬の種類と量にばらつきがあるため、Hossardたちは、処理頻度指標を用いて、この統計モデルにおいて一般的な農薬の使用を検討できるようにした。
この統計モデルによる予測によれば、農薬使用を50%削減した場合に、フランスでのフユコムギの収量が200~300万トン減少するとされた。これは、フランスのコムギ輸出量の15%に相当するが、農薬使用を100%削減した場合の収量減少の推定値をはるかに下回っていた。異なるタイプの農薬(例えば、防カビ剤、除草剤、殺虫剤)が作物生産量に及ぼす影響、そして、フユコムギ以外の作物に対する農薬使用の削減の影響可能性を明らかにするには、今後の研究の積み重ねが必要だ。
doi: 10.1038/srep04405
注目の論文
-
12月19日
天文学:月の年齢はより古いNature
-
12月19日
気候変動:南極の海氷減少が嵐の発生を促すNature
-
12月17日
惑星科学:土星の環が若々しい外観を保っている理由Nature Geoscience
-
12月12日
天文学:Firefly Sparkleが初期の銀河形成に光を当てるNature
-
12月11日
気候変動:世界的な観光産業による二酸化炭素排出量は増加し、不平等であるNature Communications
-
12月10日
Nature's 10:2024年の科学に影響を与えた10人Nature