信念の違いは単なる意見の相違ではない
Nature Climate Change
2015年2月3日
Belief is not just a matter of opinion
気候変動緩和策への支持を集めるための戦略には、一般市民が科学の理解を深められるようにする試み以上の活動が必要だという報告が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究で、人為起源の気候変動に関する懐疑派と支持派の行動と信念は、特定の社会的アイデンティティーを支える統合的な自己表現として理解できることが明らかになった。
一般市民の間では、気候変動は現実の出来事だという信念が広がっている。しかし気候変動の原因については鋭い意見の対立があり、人間の活動を原因とする考え方に懐疑的な人が多い。今回、Ana-Maria Bliucたちは、米国に居住する気候変動懐疑派120人と気候変動支持派328人を対象としたオンライン調査を行い、環境に配慮した行動、情動反応、国家と国際社会への同一化、その他のいくつかの変数について、2つの集団の違いを調べた。
その結果、気候変動の原因に関する懐疑派と支持派の対照的な意見が、それぞれの人格、主義、同調者(敵対者)を決める社会的アイデンティティーの基盤となっていることが明らかになった。こうした信念や情動反応は、人間の自己の1つの側面を構成しており、これを基にして、それぞれの集団の立場を前進させる行動に対する支持を予測できる。
また、Bliucたちは、それぞれの集団の集団意識の1つが、対立する集団に対する怒りであることも指摘している。このことは、懐疑派の反感を買って、対立する集団に対する怒りを増幅させると、対立がますます激化し、反対運動にのめり込ませる結果になることを示している。以上の新知見を考え合わせると、こうした対立を教育戦略だけで克服できる可能性は低いことが分かる。Bliucたちは、各集団の活動によって生じる可能性の高い結果について、支持派を励まし、懐疑派に思いとどまらせることがコンセンサスを得るための方法として効果的だという考え方を示している。
同時掲載されるNews & ViewsでTom Postmesは「Bliuc et al.で報告された研究結果では、2つの社会運動の真正面からの対立を回避し、解消させるための方法を探究することによって、今後の研究と理論構築が大きく前進する可能性があり、集団の動態を理解することが気候変動に関する信念を変えさせるうえで役立つことが明らかになっている」と述べている。
doi: 10.1038/nclimate2507
doi:10.1038/nclimate2537
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