注目の論文

陸と海での炭素捕捉

Nature Geoscience

2008年6月23日

Carbon capture by land and by sea

人間活動による窒素堆積が増えても、陸上と海洋での二酸化炭素の取り込み量の増加率が10%を超える可能性は低い、と結論づけたレビュー論文が、Nature Geoscience(電子版)に掲載される。これでは、今後100年間に予想されている大気中の二酸化炭素濃度の上昇には対応しきれないことになる。これと関連して、Progress論文では、ヨーロッパの森林で入念な管理が行われた結果、木材需要を満たしつつ、過去50年間に炭素貯蔵量が増えた、という知見が示されている。

D Reayらのレビュー論文では、窒素堆積の増加が森林、土壌、海洋での二酸化炭素貯蔵に及ぼす影響に関する複数の研究を概観している。土壌と海洋での炭素取り込みの応答は、個々の研究によって差があり、その規模も限られている。これに対して、森林では、窒素肥料の散布があると炭素取り込み量が有意に増える。このため、2030年までには、1年間に人間活動によって排出される二酸化炭素が、今よりも10%多く森林に取り込まれる可能性があるとReayらは述べている。ただし、その増加率は1~2%というのが、より現実的な予測とされる。いずれにせよ、これでは、今後予想されている、人間活動による二酸化炭素排出量の増加には対応しきれない。

P Ciaisらの研究では、1950~2000年のヨーロッパの森林調査結果と木材伐採統計の比較により、森林バイオマスの増加率が木材伐採量の増加率を上回っていたことが判明した。そして、適切に管理された森林は、数十年の時間スケールで炭素シンクとして作用する、という結論が示されている。

いずれの研究でも、地球生態系の炭素貯蔵に対する人間活動(森林管理や窒素堆積)の影響が重要な点が浮き彫りになっている。

doi: 10.1038/ngeo230

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