Nature ハイライト
Cover Story:分子よけ:コレステロールの動きがトビムシに汚れが付かない皮膚を与える
Nature 618, 7966
表紙に示されているTetrodontophora bielanensisなどのトビムシ(トビムシ目)は、皮膚を通して呼吸する無脊椎動物であるため、その表面を汚れないようにしておく必要がある。今回C Wernerたちは、トビムシの体表面のコレステロールの層が、汚れが付かないコーティングになる仕組みを明らかにしている。彼らは、実験と原子レベルのシミュレーションを併用して、コレステロール層の反発能力が、コレステロール分子の配向のゆらぎに起因することを見いだした。こうしたゆらぎによって、「エントロピー的反発」が生じる。すなわち、基本的には、皮膚への生体分子の吸着にはコレステロール分子が拘束されている必要があるが、これはエントロピーを低くするため、より熱力学的に不利になると思われる。著者たちは、この知見は、吸着を抑制する材料の開発に役立つ可能性があると示唆している。
2023年6月22日号の Nature ハイライト
天文学:初期銀河内のPAH放射の空間的ばらつき
天文学:電子対不安定型超新星から生じた金属欠乏星
極低温気体:密度波秩序と超流動の相互作用の観測
計測学:量子限界に近づく時刻転送
フォトニクス:高輝度単一モード連続波フォトニック結晶レーザー
材料科学:人工的な軟骨様タンパク質ヒドロゲル
気候科学:陸域炭素循環の経年変動の制御要因
地球科学:水文学的負荷の地震誘発能
進化学:ステム群真核生物の出現は遅くなかった
遺伝学:多遺伝子スコアに多様性を取り入れる
社会科学:モラルは本当に低下しているのか
神経科学:幻覚剤に共通する作用基盤
植物科学:植物が昆虫から身を守る機構
細胞生物学:ほくろに毛が生えるわけ
神経免疫学:腸神経系における常在型マクロファージの重要な役割
がん:腫瘍免疫表現型をin situで探る新技術
腫瘍生物学:日光への曝露が腫瘍形成の引き金に
分子生物学:最後まで続けるのが大事
細胞生物学:ストレスにさらされたミトコンドリアは核にシグナルを送る
生化学:Cas4を持たないCRISPRシステムが標的配列を獲得する仕組み
構造生物学:FGF23–FGFR–αKlotho–HS複合体の構造