Nature ハイライト
Cover Story:雲の中で:イソプレンが対流圏上部での新しい粒子の形成を促進
Nature 636, 8041
大気中の粒子は雲の形成と性質に影響を与えることがあるため、気象モデルや気候モデルに組み込む必要がある。しかし、粒子の種類、その発生の仕方や場所、そしてその影響の程度は十分に解明されていない。今週号では2報の論文が、対流圏上部における新たな粒子形成の機構を明らかにしている。いずれの論文も、イソプレンという、植物が生成する気体であり、メタンに次いで大気中に放出される炭化水素の中で最も多い化合物に重点を置いている。X Heたちは、CERNの実験用CLOUDチャンバーを使って、対流圏上部で見られる条件下でのイソプレンの挙動を調べ、この気体がヒドロキシルラジカルと反応して新しい粒子を形成し、それが急速に成長することを見いだした。J Curtiusたちは、HALO研究航空機を使ってアマゾン盆地上空の対流圏を観測し、イソプレンナイトレートが新しい粒子の形成を促進していることを明らかにした。以上の結果から、両論文は、イソプレンが対流圏上部での新しい粒子形成の主要な機構の原因物質である可能性を特定し、気候モデルに組み込む必要のある粒子の分布、種類、性質を拡大している。
2024年12月5日号の Nature ハイライト
銀河進化:遠方のサブミリ波で明るい銀河のバルジの形成
量子コンピューティング:複数の量子プロセッサーを古典的に接続した量子コンピューター
量子シミュレーション:二次元ヒルベルト空間の断片化
工学:鳥のように飛び立てるロボット
化学:非常に似通った高分子を互いに分離する
生体材料:骨移植用の新たな競合材料
化学:遷移金属触媒を用いない求電子剤カップリング
生態学:熱帯林は大きな自然再生能力を秘めている
古生物学:ジュラ紀までさかのぼったオタマジャクシの起源
植物科学:C4光合成を可能にした分子進化
神経回路:空腹が摂食行動を進める仕組み
再生医療:造血幹細胞の遺伝子治療の最長8年の追跡調査
生理学:同じ骨髄でも造血特性は部位によって異なる
免疫学:重症マラリアに幅広く有効なモノクローナル抗体
微生物学:翻訳阻害を介した新たな抗ファージ防御機構
腫瘍免疫学:幹細胞様の特徴を持ちながら腫瘍特異的に働くCD4 T細胞が見つかった
がんゲノミクス:大腸の前がん病変の進行を細胞レベルで見る
がん:主役が遅れてやってくる理由
生物物理学:SWR1によるヌクレオソーム反転