Nature ハイライト 医学:病原性獲得へのパスポート 2007年5月17日 Nature 447, 7142 コレラ菌、緑膿菌などのヒト病原菌は、ADP-リボシルトランスフェラーゼ(ADP-RT)活性をもつ毒素を分泌する。今回、植物の病原菌で多くの種に斑点病を引き起こすPseudomonas syringaeの病原性タンパク質がADP-RT活性をもつことが初めて明らかになった。HopU1は、この病原菌がIII型タンパク質分泌系を介して宿主細胞内に注入するタンパク質の1つである。このタンパク質は免疫系のタンパク質AtGRP7を標的とし、植物を病原菌に感染しやすくする。植物免疫の解明がもっと進めば、病気に対する抵抗性が改善された遺伝子組み換え作物の開発につながるかもしれない。また、ADP-RTは動物では遺伝的エフェクターとしておなじみだが、植物ではそのような働きがあることは知られていない。ではこの病原菌は、植物細胞でどのようにADP-RTを使おうとしたのだろうかという進化上の疑問も、今回の知見から浮かび上がってくる。 2007年5月17日号の Nature ハイライト 神経:タンパク質と取り組むSUMO 疫学:ヒト病原体は多くが動物起源 医学:病原性獲得へのパスポート 宇宙:潮汐作用にとらえられたエンセラダス 物理:シリコンによるスピントロニクスの実現 発生:繁栄の種子 発生:けがで毛が再生 医学:ヘルペスウイルスの功罪 医学:細胞極性を乱すピロリ菌毒素 目次へ戻る