Nature ハイライト 医学:細胞極性を乱すピロリ菌毒素 2007年5月17日 Nature 447, 7142 ピロリ菌(Helicobacter pyroli)は世界人口の半数以上に感染しており、通常はあまり問題にならないものの、時として胃粘膜損傷や消化性潰瘍、胃炎、腺癌を引き起こすことがある。CagAはピロリ菌の主要な毒性因子であり、菌から上皮細胞へ直接送り込まれて細胞内シグナル伝達を阻害する。このCagAが、細胞極性に関与するタンパク質Par-1に結合して、そのリン酸化を阻害し、上皮細胞の極性を破壊することが今回明らかになった。この研究によって、ヒトの病原体とPAR細胞極性制御装置とをつなぐ分子機構が初めて明らかになり、PAR1の阻害が消化管での発癌に広くかかわっている可能性が示された。 2007年5月17日号の Nature ハイライト 神経:タンパク質と取り組むSUMO 疫学:ヒト病原体は多くが動物起源 医学:病原性獲得へのパスポート 宇宙:潮汐作用にとらえられたエンセラダス 物理:シリコンによるスピントロニクスの実現 発生:繁栄の種子 発生:けがで毛が再生 医学:ヘルペスウイルスの功罪 医学:細胞極性を乱すピロリ菌毒素 目次へ戻る