農業:太陽電池式温室で植物の成長が改善する
Nature Communications
2025年3月12日
Agriculture: Solar cell greenhouse improves plant growth
ペロブスカイト太陽電池温室を研究室規模で使用すると、ラディッキオ(キク科のチコリの一種)の苗の成長速度が速まり、葉も大きくなることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この研究は、ペロブスカイト太陽電池システムを作物栽培と統合し、持続可能な農業の発展に役立てることの可能性を証明するものである。
農業活動と再生可能エネルギー生産を組み合わせる従来の方法は、不透明なシリコン太陽電池に依存しており、太陽光を遮ることで植物の成長を妨げるおそれがある。太陽光を電気に変換できる半透明のペロブスカイト太陽電池は、エネルギー生産と農業を統合する柔軟性、拡張性、および費用対効果の高い技術として、解決策を提供できるかもしれない。しかし、光のフィルターが植物の成長に与える影響については、まだ十分に解明されていない。
Alessandra Albertiらは、半透明のペロブスカイト被覆を施した屋上に、実験室規模の温室(各2.5x2.5平方センチメートルのガラスパネル4枚)を設計し、ペロブスカイトでフィルター処理した光の下で、ラディッキオの種子の発芽と15日間の苗の成長を観察した。その結果、ペロブスカイト被覆のないガラス屋根の温室で栽培した苗よりも、成長が早く、葉も大きいことが分かった。さらに著者らは、ペロブスカイト太陽電池の下とガラスだけの下で育った苗の遺伝子発現パターンの違いを分析した。全体的なプロファイルは両者で類似していたが、ペロブスカイト太陽電池の下で育った苗では、環境ストレス応答、代謝、成長制御、および光受容に関連する遺伝子の発現にわずかな違いが見られた。著者らは、これらの苗はペロブスカイト条件下で育つように適応した可能性があると示唆している。また、著者らは、これらの適応が室内環境における作物の収穫量や農業生産量の向上に与える影響を調査するには、さらなる研究が必要であると指摘している。
著者らは、この発見はペロブスカイト太陽電池が室内での食糧生産に役立つ可能性を示していると結論づけている。
- Article
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- Published: 11 March 2025
Spampinato, C., Valastro, S., Calogero, G. et al. Improved radicchio seedling growth under CsPbI3 perovskite rooftop in a laboratory-scale greenhouse for Agrivoltaics application. Nat Commun 16, 2190 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-56227-9
doi: 10.1038/s41467-025-56227-9
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