【動物学】餌を運ぶアリは同じ巣の仲間の偵察アリの誘導で巣に戻る
Nature Communications
2015年7月29日
アリの世界では、巣の周辺に詳しい偵察アリの一群を利用して、運搬アリの一群の動きを誘導していることが明らかになった。この集団的な動きの協調によって、大きな食物の巣への運搬が最適化され、同じ餌をめぐって運搬アリが主導権争いをするような非効率を避けることができる。この研究結果の報告が、今週掲載される。
大きな負荷を集団で動かす場合、高度な協調性によって非効率化を避ける必要がある。その際、全ての個体集団が同じ行動様式に従うと考えられるが、こうした柔軟性の欠如は変化に対する応答性の低下や個体集団内での好ましくない行動の固定化につながると考えられている。
今回、Ofer Feinermanたちは、映像解析により、大きな食物(シリアルの一種「チェリオス」を含む)を巣に持ち帰ろうとするヒゲナガアメイロアリの集団における個体の動きを追跡調査した。その結果、食物を集団的に運ぶアリの数によって食物の運搬速度が決まることが分かったが、食物が移動する方向は、この集団と短期間合流した個体の影響を受けており、この個体は巣の正確な位置を熟知していることが判明した。
Feinermanたちは、この協調的な行動を説明する理論モデルを開発し、巣の周辺に詳しくない運搬アリの行動の順応度は中程度で、巣の周辺に詳しい個体が食物の移動方向を最適に誘導できる状態であることを明らかにした。こうした中間的な行動によって集団全体が順応と個性との臨界点に位置付けられており、この臨界点は、統計物理学において創発現象を説明するために用いられることの多いモデル、イジングモデルでうまく説明できる。
doi:10.1038/ncomms8729
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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