がん抑制作用のある炎症
Nature Communications
2011年3月22日
腫瘍特異的なヘルパーT細胞によって生じる炎症は、がんを促進するのではなく、防止する可能性があると結論付けた論文が、Nature Communicationsに発表された。この研究は、将来的にがんの免疫療法を開発するための基礎となる可能性がある。慢性炎症ががんの素因となることは十分に確立されており、抗炎症薬ががん治療薬として提案されたこともある。ところが、A Corthayらは、抗炎症治療法が、防御性の高い抗腫瘍免疫を抑制する可能性があるという見解を示している。今回、この考え方を検証し、防御性の高い抗腫瘍免疫応答の性質について解明を進めるため、Corthayらは、特定のタイプのがん細胞が埋め込まれたゲル基質をマウスに注射し、このがん細胞に対する一次免疫応答が起こっている際に局所的に分泌されるサイトカインを定量化した。そして、これを用いてアッセイを行い、がん細胞の排除と一貫して関連する9種のサイトカインを同定した。これらのサイトカインには、ヘルパーT細胞関連サイトカインと炎症性サイトカインが含まれている。炎症性サイトカインについては、これまで、腫瘍の進行に必須だと強調されていた。ただし、Corthayらは、そのほかのタイプの炎症、あるいは腫瘍特異的でない炎症は、腫瘍の発生を予防する効果がなく、むしろ促進する可能性もある、と警告している。したがって、がんに対して抗炎症治療法を考慮する場合には注意を要する。また、今回の研究成果をヒトにも正確に転用できるかどうかを判断できるまでには、さらなる研究が必要となるだろう。
doi:10.1038/ncomms1239
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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