【考古学】現生人類のインドネシア到達の歴史を書き換える化石の発見
Nature
2017年8月10日
現生人類がインドネシアのスマトラ島に到達したのは、トバ山の壊滅的噴火より早い73,000~63,000年前だったことを示唆する新たな化石証拠について報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今から60,000年以上前に現生人類が東南アジアに存在していたことを示す遺伝学研究が報告されているが、実際の化石証拠は極めて少なく、間接的なものだった。
スマトラ島のパダン高地にある更新世の洞窟(Lida Ajer)には豊かな多雨林動物相があり、19世紀後半に初めて行われた発掘作業でヒトの歯が2点見つかった。今回、Kira Westawayたちの研究グループは、Lida Ajer洞窟を再び調査して、これらの歯が現生人類に特有なものであることを確実に同定した上で、3種類の年代測定法を用いてこれらの化石の年代を決定して確実な年表を作成した。つまり、Westawayたちは、赤色熱発光法とpost-infrared infrared-stimulated luminescence(pIRIR)法によって堆積物の年代を測定し、この洞窟に関連する洞窟生成物の包括的な年代をウラン系列年代測定によって決めることで埋没年代を決定したのだった。
Lida Ajer洞窟は、現生人類が多雨林環境に居住していたことを示す最古の証拠だ。海洋環境がヒトの生命維持にとって好条件であったと考えられることから、アフリカを出た現生人類が海岸に沿って移動したとする仮説が長い間有力視されている。これに対して、多雨林では、各種資源が広く分散している上に季節性があり、食料の栄養価も低いため、ヒトの定住が非常に難しいと考えられていた。多雨林環境をうまく利用するには、複雑な計画立案と技術革新が必要とされるが、Westawayたちのデータは、そうしたことが70,000年前よりもかなり前から存在していたことを示している。
doi:10.1038/nature23452
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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