【ゲノム編集】4種の塩基転位全てに対応する新しい一塩基エディター
Nature
2017年10月26日
新しいクラスの「一塩基エディター」が開発され、2本鎖DNAの切断を起こさずに、選択的かつ効率的にDNAの4塩基全てを個別的に置き換えられるようになった。一塩基エディターとは、生細胞のゲノム中の1つのDNA塩基の原子を再配列して、別の塩基に類似させるようにプログラムできるタンパク質装置のことをいう。この新しい一塩基エディターは、遺伝性疾患の原因となる一塩基変異を修正し、あるいは疾患を抑制する一塩基変異を導入するために使用でき、遺伝性疾患のさらなる解明と新規治療法の探索に役立つ可能性があると期待されている。
DNA二重らせんは、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の合計4種類の化学塩基(「文字」)からなり、CとG、AとTが対を形成するように配列されている。2016年にDavid Liuたちの研究グループは、遺伝コードの1文字を標的として修飾するCRISPR-Cas9関連の一塩基編集法の開発について記述した論文を発表した。この一塩基編集システムは、従来の方法より効率的に一塩基変異の修正を行うことができ、想定外のDNA修飾を起こしにくく、ゲノム中でのランダムな欠失や挿入が非常に少ないため歓迎された。そして、CRISPR-Cas9のような編集法では、一般的にDNA二本鎖の切断が生じる。ただし、当時のシステムはG-C塩基対からT-A塩基対への転位しかできなかった。今回のLiuたちの研究論文では、A-T塩基対からG-C塩基対への転位を可能にした新しいクラスのアデニン一塩基エディター(ABE)について記述されている。
既知の疾患関連の一塩基対変化の約半分は、野生型G-C塩基対から変異型A-T塩基対への転位が関係しているため、今回Liuたちが発表した新しい一塩基編集システムABEを使えば、こうした変異の多くを修復できる可能性がある。ABEは、細菌とヒトのいずれの細胞のDNAでも作用することが明らかになっている。ヒトの細胞の場合、ABEは、他のゲノム編集法よりも高い約50%の効率で広範な標的領域に目的の遺伝的変化を導入でき、想定外の副産物(例えば、ランダムな挿入、欠失又はその他の変異)はほとんど生じない。
doi:10.1038/nature24644
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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