【がん】T細胞を用いてがん免疫療法を改善
Nature Communications
2018年3月7日
腫瘍細胞上のさまざまなマーカーを認識するTリンパ球(白血球の一種)を培養で生成する新しい方法が開発され、この方法が、多形神経膠芽腫の治療に適している可能性のあることが、予備的臨床試験結果によって明らかになった。この結果を報告する論文が、今週掲載される。
Tリンパ球などの免疫細胞の養子移入(患者への白血球の移入)に有意な治療効果のあることが、進行がんを対象とした臨床試験で明らかになっている。この方法による腫瘍根絶の主要な決定要因となっているのが、Tリンパ球によるがん特異的な抗原の認識だ。しかし、これまでの多数の研究から、個々の抗原の発現は、腫瘍の種類と進行度によって大きなばらつきがあり、さらに個々の腫瘍内でも大きなばらつきがあることが分かっている。
今回、Alexei Kirkinたちの研究グループは、可能な限り広範ながん特異的抗原のレパートリーを標的にするため、「患者特有の」複数の抗原に対して特異性を有する患者由来のTリンパ球の養子移入を用いた方法を開発した。Kirkinたちは、患者由来の細胞を5-アザ-2′-デオキシシチジンという特別な薬物で処理して、培養下でTリンパ球の産生を誘導した。また、Kirkinたちは、多形神経膠芽腫を再発した25人の患者が参加した第I相臨床試験(現在進行中)の予備的結果の一部として、これらのTリンパ球の注射によって3人の患者において腫瘍の退縮が起こり、副作用が見られなかったことを報告している。
以上の結果を基に、Kirkinたちは、この方法が別の種類のがんの治療法として検討対象になり得るという考えを明らかにしている。しかし、臨床試験は初期段階にあり、この方法が持つ可能性を十分に理解するには、臨床試験の完了が必須である。
doi:10.1038/s41467-018-03217-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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