【環境科学】沿岸湿地は海水準上昇によって水没しないかもしれない
Nature
2018年9月13日
今後100年間にわたって海水準上昇が予測されているが、特定の条件が満たされれば、沿岸湿地の全球表面積が最大60%増加する可能性のあることを報告する論文が、今週掲載される。
沿岸湿地(例えば、沼地、マングローブ)は、天然の沿岸保護を行う重要な生態系だ。数多くの研究で、海水準上昇に伴って湿地が広範囲に失われることが予測されているが、この脅威に関しては誇張があり、湿地を保全できる可能性のある局所フィードバック機構について詳しく研究されているにもかかわらず、全球モデルにおいて考慮されていないとする評価結果もある。
今回、Mark Schuerchたちの研究グループは、沿岸湿地には堆積物と湿地の「収容空間(湿地の移動先となり得る内陸空間)」を蓄積する能力があることを考慮に入れて、全球的な沿岸湿地の回復力を評価することで、こうした制約に取り組んだ。この研究では、海水準上昇と人間の活動に対する地球上の湿地の応答のシミュレーションが行われ、既存の沿岸湿地の少なくとも37%について十分な収容空間が確保されているという条件が満たされれば、沿岸湿地の全球表面積が最大60%増加する可能性があることが明らかになった。十分な収容空間が得られないというシナリオでは、沿岸湿地の面積が全体的に減少し、(海水準上昇がさらに進行するシナリオでは、減少が顕著になる)ことが予想され、その理由として、堆積物の不足が深刻化することが挙げられている。
Schuerchたちは、それぞれの地域での水路管理、例えば、ダム建設と浚渫工事が、このシミュレーションを複雑化させる可能性を指摘し、沿岸湿地を海水準上昇から保護し、全球的に急増する沿岸域の居住民を守るためには、沿岸湿地の内陸への移動を促進する広域的な沿岸管理方法が必要だと考えている。
doi:10.1038/s41586-018-0476-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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