環境:中国では、COVID-19関連のロックダウンによって大気の質が改善した
Nature Sustainability
2020年7月7日
COVID-19の蔓延を防ぐためにロックダウンされた中国の都市では、大気質指標(大気汚染の尺度)が19.84ポイント低下し、微小粒子状物質が17%減少したことが、Nature Sustainability に掲載されたモデリング研究で示唆されている。公式にロックダウンされていなかった都市でも、検疫の強化、私的な集まりや公的な集会の禁止、移動の制限などのウイルス対策の結果として、それほど大きくはないが大気の質は改善された。
中国はCOVID-19の蔓延を防ぐために、今回の調査の対象とした324都市のうち95都市をロックダウンし、個人の移動と経済活動を厳しく制限した。こうした予防策は、大きなコストを伴う可能性があるが、短期的には環境の質を大きく改善する可能性もある。
今回、G He、Y Pan、T Tanakaは、2020年1月1日から3月1日の各都市の日ごとのデータを解析した。研究チームは、中国の地方都市全てをカバーする1600か所のモニタリングステーションから大気質データを収集し、ステーションレベルのデータと都市レベルのデータを組み合わせた。次に、報道機関や政府発表から地方自治体のロックダウン政策を都市ごとに収集した。研究チームは、計量経済学モデルを用いて、大気汚染に対するロックダウン対策の影響を定量化した。その結果、ロックダウンされた都市では、ロックダウンされていない都市と比較して、、わずか数週間で大気質指標が19.84ポイント低下し、直径2.5マイクロメートル未満の粒子状物質(PM2.5)が17%減少したことが分かった。また、ロックダウンされていない都市でも、前年と比較して、大気質指標が6.34ポイント、直径2.5マイクロメートル未満の粒子状物質(PM2.5)が17%改善していた。さらに著者たちは、ロックダウンの影響が、都市が寒冷であればあるほど、裕福であればあるほど、そして工業化が進んでいればいるほど大きいことも明らかにした。
こうした改善にもかかわらず、ロックダウン期間のPM2.5濃度は、世界保健機関の勧告よりまだ4倍高かった。著者たちは、環境政策によって、都市全体のロックダウンよりもずっと少ない経済的コストで同様の大気質の改善が得られる可能性があると主張しており、これは、都市のロックダウンは環境問題に取り組む上では、持続可能でない選択肢であることを示唆している。
doi:10.1038/s41893-020-0581-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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