Research Press Release

気候変動:温室効果ガス排出は人工衛星を脅かすかもしれない

Nature Sustainability

2025年3月11日

大気中の人間による温室効果ガス排出量の増加により、高排出量シナリオでは、今世紀末までに地球を安全に周回できる衛星の総数が、現在の許容能力の最大66%まで減少するかもしれない。このモデリング研究の結果は、Nature Sustainability に掲載される。

これまでの研究により、大気中の温室効果ガスが増加すると、中間圏(50–85キロメートル)と熱圏(85–600キロメートル)からなる地球の上層大気が収縮することが明らかになっている。これは、入射する赤外放射が宇宙空間に反射されることで冷却と収縮が起こるためである。この収縮により、地球の軌道空間の密度が低下し、大気との摩擦が減少するため、宇宙ゴミが軌道上に留まる時間が長くなる。地球の軌道上の人工衛星の数が増加するにつれ、長期にわたる地球の軌道空間の利用において、持続的な宇宙ゴミがますます大きな問題となる。

William Parkerらは、大気圏モデリングを使用して、異なる排出シナリオのもとで2100年までに地球の軌道上で持続的に維持できる人工衛星の数を推定した。2000年の温室効果ガス濃度を基準として、Parkerらは、最も排出量の多いシナリオ(Shared Socio-economic Pathway〔共通社会経済経路〕、SSP5-8.5)では、太陽活動の影響により、2100年までに低軌道で持続的に管理できる衛星の最大数が50–66%減少することを発見した。これは、約2,500万–4,000万個の人工衛星に相当する。また、著者らは、軌道上の物体の理想的な分布と、異なる排出シナリオ下で観測されたこの理想的な分布からの逸脱を推定した。著者らは、中程度から最も高いシナリオの二酸化炭素排出率では、大気との摩擦により軌道を外れる人工衛星の割合が大幅に減少することを示している。

衝突のリスクを低減するために能動的な軌道離脱技術が検討されているが、著者らは、温室効果ガスの排出量を削減することは、地球の気候だけでなく、宇宙へのアクセスと利用を維持するためにも重要であると指摘している。

Parker, W.E., Brown, M.K. & Linares, R. Greenhouse gases reduce the satellite carrying capacity of low Earth orbit. Nat Sustain (2025). https://doi.org/10.1038/s41893-025-01512-0
 

doi:10.1038/s41893-025-01512-0

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