創薬:ラマ由来の抗体によるSARS-CoV-2の中和
Nature Structural & Molecular Biology
2020年7月13日
培養細胞中のSARS-CoV-2とヒトACE2受容体との相互作用を遮断することによってSARS-CoV-2を中和する、2種類のナノボディ(ラマ由来の安定した低分子抗体変異体)について報告するJames Naismith、Raymond Owensたちの論文が、Nature Structural & Molecular Biology に掲載される。
ウイルス中和剤(過去にSARS-CoV-2に感染したことのある者の血清や精製抗体)を患者に投与する受動免疫療法は、COVID-19の有用な治療法となる可能性がある。SARS-CoV-1に対する抗体は、SARS-CoV-1のスパイクタンパク質とACE2の結合を阻害することで、SARS-CoV-1を中和するが、この抗体の多くはSARS-CoV-2と交差反応しない。ヒトの抗体は、ほとんどの哺乳類の抗体と同様に、2本の鎖(重鎖と軽鎖)からできている。これに対して、ラクダ科動物(ラマなど)には、「ナノボディ」と呼ばれる1本の重鎖抗体変異体もある。ナノボディは、安定した低分子抗体で、容易に作製できるため、診断と画像化に用いられてきた抗体の代替品として利用されることが多い。現在、ナノボディは、SARS-CoV-2に対する研究ツールと治療薬候補として開発が進められている、
この論文では、培養細胞のACE2とSARS-CoV-1のスパイクタンパク質との結合を遮断できる2種類の近縁のナノボディ(H11-H4とH11-D4)の特定と特性解析の結果が報告されている。これらのナノボディは、ACE2結合領域と隣接しているか、わずかに重複しているタンパク質領域を標的としている。これら2種類とも生きたSARS-CoV-2を中和することが明らかになり、特にH11-H4が強力で、ヒト抗体による相加的中和効果も認められた。
doi:10.1038/s41594-020-0469-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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